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滞在時間は厳格に『3分』。巧妙な手口とは…

 彼らはピッキングはせず、ガラスを割って堂々と侵入するという。そして、その大胆な手口と逃走はますます巧妙化していた。元窃盗団関係者が続ける。

「例えば、滞在時間は厳格に『3分』と決めていました。アルソックやセコムなど警備会社が現場に到達するまでにかかる最短時間は5分程度。逃走時間も考慮し、短めに設定した絶対安全圏の3分を過ぎれば、どれだけ目の前に金がありそうでも必ず撤退します。また金庫に金を入れているケースもありますが、男2人で持ち上げられない金庫なんてほとんどありません。自分たちは金庫ごと持ち去って、高架下や橋の下などに持っていき、そこでぶっ壊して中身を盗って捨てていました。必ず、警察が来ても四方八方に仲間が逃げられる場所を選んでいましたね。

写真はイメージ ©️iStock.com

 以前、窃盗事件が頻発した高級住宅街は、巡回している警察官が3分以内に現場に駆けつけるリスクがあります。金はあるのかもしれませんが、自分たちは狙ったことはありませんでした」

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「住人と遭遇しても声を出さない」ルール、その理由は…

 情報屋から不在の情報を得ていたとしても、その情報が間違っていて、現場で住人に遭遇してしまうこともあるという。仮にそういったことが起きた場合の防衛策も実に狡猾だ。

「逮捕された場合の罪名についても、侵入前から考慮しています。例えば、住民と遭遇してしまった場合でも、絶対に声を出さないと決めていました。会話して脅しと捉えられれば、容疑が窃盗よりも重い、強盗になる可能性があるからです。自分たちは『あ』とも言ってはいけないというルールを課していました」(同前)

 また、犯行現場には決して痕跡を残さないように、身なりについても徹底しているという。別の元窃盗団の関係者が話す。

「現場から走って車まで逃げる際、靴が脱げると、あとで警察に入手ルートを調べられる可能性があります。だから靴と足をテープでぐるぐる巻きにして固定し、絶対脱げないようにしていました。万が一脱げても大丈夫なように、靴はその辺のスーパーで売っているような安いスニーカーにしていましたね。服装は目立たないように上下黒のジャージ、マスク姿です。指紋が付く恐れがあるので、軍手は二重にしていました」

愛知県警本部 ©文藝春秋

 盗品を金に換えるためのルートも確立しており、盗られた時計などの金製品は業者で溶かしてから売りさばくのが基本だったという。ちなみに車を盗んだ場合もGPSなどが付いている可能性を考え、1日近隣の駐車場などに寝かせて様子を見て、逮捕を逃れているのだそうだ。