天体の動きなら計算できるが、人の狂気など計算できない!/ニュートン(科学者)
1642年~1727年。イギリスの数学者、物理学者、天文学者。「近代精密科学の祖」といわれる。「三大発見」と呼ばれる光のスペクトル、万有引力、微積分の研究などで名高い。主著として『プリンキピア(自然哲学の数学的諸原理)』が著名。
「リンゴが落ちるのを見て万有引力の法則を発見した」といわれるニュートン。このリンゴのエピソードが実話なのか否かについては諸説ある。「まったくのつくり話だ」という人と「いや、考えるきっかけとなったというのは事実だ」という人がいて、なかなか決着はつきそうにない。ただし、逸話に登場するリンゴ(接ぎ木)は、現在も伝わっていて、日本に根付いているものもある。
さて、ニュートンといえば、万有引力などを発見した科学者として有名だが、実は他にも多彩な顔を持っている。
造幣局監事(のちに長官)となり、ニセ金作りの取り締まりなども行った。ニセ札偽造犯を死刑に追い込んでもいる。国会議員も務め、学術団体である王立協会の会長にも選出されている。神学者としての顔も持ち、少し変わったところでは、錬金術にも凝っていたようだ。
一方で、投資家として株式の投資にのめり込んだこともあるらしい。
18世紀のイギリスで、南海株式会社という貿易会社の株式が人気となった。この会社は南米との貿易及び奴隷貿易の独占権を得たことで「必ず儲かる」との世評が高まったのである。
まったくの嘘ではなかった。事実ニュートンもこの会社への投資により7000ポンドほどの収入を得たという。
ところが、南海会社の株式はその後も上昇し続けた。「まだイケル!」と考えたのだろう。ニュートンはさらに株式の追加投資をしたという。
しかし、突然バブルがはじけた。株式が大暴落を起こしたのだ。
皆が騒ぐほど、南海会社の経営はうまくいっていなかったのだ。奴隷貿易に関する規制強化、政府による強制的な国債買い付け要請などが原因で、実際にはあまり利益が上がっていなかったことが明るみになったのだ。
株価が暴落したことで、破産者や自殺者が続出したという。ニュートンもまた多額な損失を被った一人である。その額は2万ポンドだった、といわれている。現在の価値にして4億円以上という試算もある。
その時、失意のニュートンがいったとされるのが
「天体の動きなら計算できるが、人の狂気など計算できない」
である。複雑な天体の動きでさえ天才科学者の手にかかれば、綿密な観察と計算で完璧な予想を立てることができるが、気まぐれな人の心、ましてや投資などの集団心理を推察することはできなかった。
ニュートンは晩年、神学など宗教の問題に深く取り組んだ。計算で解決できる科学や物理学ではなく、計算できない人の心の問題に関心を寄せていった、ということなのかもしれない。
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