演者から悲鳴があがった「台本の中身」
「撮影開始当初から、演者から悲鳴があがったのは『慣れない言葉の羅列』でした。ドラマのなかで若手の官僚たちが集まり、日本未来推進会議内で侃々諤々のやりとりをする場面、そして地球物理学の専門用語を駆使する場面などで皆が噛みまくった。あの小栗さんでさえ、一番多かったときは5、6回連続でNGを出している」(同前)
とはいえ、これまで数々の撮影を乗り越えてきたベテラン陣の集まる現場。撮影が進行するにつれ落ち着きを見せそうなものだが……。
「コロナ対策で、リハーサルまではマスクにフェイスシールドでやってるんです。本番でカメラが回るときに、ようやく各々の顔全体の表情が見える。新鮮な気持ちで演技ができる一方で、いつもと違う環境で使い慣れない言葉だらけのセリフを口にするのは大変そうでした。言葉が一瞬出てこないんだそうです。小栗さんの場合、さらにそこで偏屈博士役の香川さんの怪演に気圧されて、なんてことがあったようです(笑)。
いま撮影現場はほんとうに独特で、ミスってもすぐに『失礼しました!』って謝れない。いったんマスクしてから、『ほんとごめんなさい』となる。もう一回台本を確認して、マスクのなかで繰り返して、また外して本番テイク――。手間が増え、そうこうしている間にリズムがとれずにまたセリフを噛む、という悪循環でした」
香川も『セリフは入ってるんだけど口がまわらない』
怪優と誉れ高い香川も、今回はかなり苦戦したようだ。
「香川さんも多かったですよ、NG。『セリフは入ってるんだけど口がまわらない』と言っていました。でもマツケンさんはNGが少なかったかな。ほかの人が噛んでNGを出すと、『記録のばしていきましょうよ』なんて言って和ませてくれていました。
あと、意外に多かったのは総理大臣役の仲村トオルさん。責任の重さに逡巡する場面があったんですが、『だめだ、迷いが(NG回数に)出てる』と言って、苦笑いしていました」(同前)
主演の小栗にはこんな一面も。
「学者役とのやりとりで、物理学の専門用語が連なるセリフがあったんです。難しいセリフですから、何度かNGを繰り返したんです。ようやくOKが出たあと、『俺もう一生この言葉使うことないよ! こんな難しい言葉死ぬまで使わないからもう忘れていいよね』と。さすがにスタッフからも笑い声が起きていましたけれど、わからないですよね。また数年後に映画とかあるかもしれませんし(笑)」(同前)