平井氏が『なぜ君』を引き合いに出して批判
選挙期間中、私に大きな印象を残したことが二つある。一つは、小川が日本維新の会の町川順子候補や維新幹部に出馬取り下げを打診したことで起きた一連の出来事だった。ことの是非はさておき、様々な報道によって、この件が小川にダメージを与えたことは間違いなかった。この顛末は、映画『香川1区』の中で、きちんと描きたい。
もう一つは、選挙戦中盤から、平井氏が映画『なぜ君』を引き合いに出して小川へのネガティブキャンペーンを始めたことだ。曰く「観てはいないが、あれはドキュメンタリーではなくPR映画」「あれが選挙運動だとしたら、日本中の国会議員が映画を作るようになる」。最初に聞いたのは街の中心部の瓦町駅前での街頭演説だった。一瞬、耳を疑った。隣で撮影をしていたプロデューサーの前田亜紀に思わず確かめた。「いま、PR映画って言ったよな?」「言いました」。
やがて語気はどんどん強まり、映画についての激しい批判が続いた。私は「これはこの場で反論しなければ」と思い、演説が終わると平井氏に近づいた。車道側にいた平井氏と歩道側にいた私の距離は5メートルほどあり、大きな声で呼びかけた。「平井さん! 平井さん! PR映画っていう言い方はないんじゃないですか!」。平井氏は何も答えずに去って行った。
平井氏への3つの反論
その日の夜には、別の演説会場で映画について批判をしている平井氏の動画がTwitterにアップされた。以降、平井氏は連日にわたり映画を絡めて小川を批判した。
この件については、私も当事者であるのできっちりと反論したい。論点は主に三つある。まず、映画を観ていないのに批判する、というのはマナー違反である。映画に限らず、あらゆる表現に対してもこのマナーが適用されるのは常識だ。ましてや平井氏は閣僚も務めた権力側に立つ政治家だ。そうした人物が、このような発言をすることは表現の自由に対する弾圧につながりかねない。
2点目は、「PR映画」「相手候補者のコマーシャル」という批判について。これはまったくの的外れだ。『なぜ君』は私が企画し、製作した映画であり、小川に頼まれて作ったわけではない。むしろ頼まれていたら断っていた。加えて『なぜ君』では、有権者が小川を厳しく批判するシーンも映し出しているし、離合集散を繰り返す野党の不甲斐なさもきちんと描いている。あの映画を観て小川を好きになるか、嫌いになるかは観た人の判断であり、私が関知するところではない。
3点目、「これが許されるなら全国の政治家が映画を作る」という平井氏の主張は、映画を製作した主体をすり替えている。繰り返すが、『なぜ君』は小川が作った映画ではない。平井氏は「私はギャラももらっていない」などとも言っていたが、小川に対してもギャラなど一切払っていない。当たり前だ。「出演してもらった」のではなく、公人中の公人である政治家を「取材した」だけなのだから。