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「ネガティブキャンペーンはやらない」と即答した小川の秘書

 それにしても平井氏は、こうした事実と異なる言説を有権者に訴えなければならないほど追い詰められていた、ということなのだろうか。私が8月に議員会館で初めて平井氏と会ってインタビューをしたときに、「タイトルがキャッチーでいい」「政治に関心を持つ人が増えるのはいいこと」と言っていたのは、なんだったのか。選挙で劣勢になったことがまるで映画のせいだと言わんばかりの主張を繰り返したが、自身の「脅し発言」や「NTT接待問題」の方がよほど大きな影響を与えたと私は思うのだが。

 平井氏による映画に絡めた小川批判が始まったころ、対抗して小川陣営はネガティブキャンペーンをやることを考えていないのか、と小川の秘書の坂本弘明に聞くと「やりません」と即答だった。やろうと思えばこれほどやれる相手もいないのに、清々しいほど、きっぱりとした答えだった。

「民主主義とは、勝った51がいかに残りの49を背負うか」

 冒頭の当選確実の場面に戻る。小川は支援者たちへのお礼のあいさつを、こう締めくくった。

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「かねてから民主主義とは、勝った51がいかに残りの49を背負うか、と言ってきました。その意味でご奮闘された対立候補のみなさまにも心からエールを送り、その皆様をご支援なさったみなさまにも心より敬意を表し、日本の民主主義をより懐深く、志高く、温かく、思いやりに満ちた、希望を感じるものとするよう、みなさまといっしょに育ませてください」

自転車で選挙活動をする小川淳也氏 ©️ネツゲン

 2日後の11月2日。立憲民主党の枝野幸男代表が衆院選敗北の責任を取るために、辞意を表明した。同じ日、小川は代表選出馬を目指す考えを示した。その結果は、映画『香川1区』のエピローグとなるはずだ。