高齢の母を介護しながら2人で貧しく暮らす“心優しきピエロ”アーサー。少年たちからリンチを受けたことがきっかけで護身用の銃を持ち歩いていたが、小児病棟に持ち込んだのがバレて、ピエロの仕事をクビになってしまう。
コメディアンの夢が絶たれた失意の帰り道。アーサーは、地下鉄で暴力を振るってきた酔っ払い3人を勢いで射殺するが、やがて事件が注目を浴びるのを見て、アーサーは呟く。
「僕はずっと自分が存在するのかわからなかった。でも、僕はいる」
そんな映画「ジョーカー」のホアキン・フェニックス扮する主人公に自身を重ね合わせ、犯行が自分に救いをもたらすとでも思ったのだろうか。
10月31日、東京都調布市の京王線布田―国領駅間を走行中の特急列車で、72歳の乗客男性が刺され、車内に放火された事件。逮捕された服部恭太容疑者(24)は、ジョーカーを想起させる派手なスーツを着ており、「警察からの取り調べに対しジョーカーへの憧れを口にしている」(社会部記者)という。
服部容疑者は犯行前の今年7月、福岡市内の大手携帯会社傘下のコールセンターを“顧客トラブル”で退職後、失意のなかで凶行に及んだようだ。元勤務先の担当者が語る。
顧客とトラブルになったのは「チャット上」
「服部氏は2018年4月入社で、3年以上勤めた後、今年7月に退職しました。スマートフォンなどの通信機材の使い方や使用料金など、顧客からの問い合わせにチャットで返答する業務をしていたようです。辞めた原因は、今年5月にチャット上で顧客とトラブルがあり、部署の配置転換を打診したのがきっかけと聞いています。
退職にあたり揉めたという話も聞いておりませんし、本人が自主的に辞めたと聞いています。それまで勤務態度に、何か問題があったとも聞いておりません」
元勤務先は“円満退社”を強調するが、本人が胸中に何を抱えていたのかはわからない。破れかぶれになったのか、退職後、福岡を出た後の4カ月に及ぶ滞在費は、消費者金融から借金をして賄っていたようだ。捜査関係者が語る。