プロ野球「日本ハム」の新監督に新庄剛志(49)が就任した。11月4日に札幌市内のホテルで行われた記者会見では、「選手の顔はまったくわからない」と話し、「レギュラーなんかは誰一人決まっていない」と言い切った。
私は新庄の「恩師」で、2020年2月に84歳で亡くなった野村克也氏に生前何十時間にもわたってインタビューを繰り返してきた。野村氏には様々なことをお伺いしたが、その中には愛弟子である新庄についての鋭い分析もあった。ある日、何かのはずみで「もし新庄さんが監督になったら」と聞いたことがある。野村氏は「彼は長嶋と同じで直感力が鋭い」と自身の永遠のライバルである長嶋茂雄さんと比較して、「監督・新庄」の可能性について語ったが、同時に「まっ、彼が監督になることなどあり得んだろうが……」と言い添えることを忘れなかった。
しかし、事実は小説より奇なり。自ら「BIGBOSS」と名乗る新庄は早くも球界の台風の目になりつつある。生前の野村氏の言葉から、新庄監督の可能性について探る。
(全2回の1回目/後編を読む)
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「主食はポテトチップス」と聞いて、ホンマかいなと
11月4日、フラッシュの中心に深紅のスーツにデカ襟の白いワイシャツという服装の新庄がいた。
「優勝なんかは一切目指しません!」
「監督って呼ばないで、『BIG BOSS(ビッグボス)』でお願いします」
周囲が期待していた言葉とは、真逆のことばかり口にする。前例にとらわれないチーム作りに注目が集まった。私はかつての師匠である野村克也氏に生前、新庄はどういう選手だったのかと聞いた時に、野村氏が発した言葉を思い出していた。
「宇宙人だよ」
野村氏は一言そういった。私が「どういうことですか?」と再び質問すると、
「ヤクルトの監督時代、昔から懇意にしているマスコミ関係者から、『彼はポテトチップスを主食にしている』っていう話を聞いたんだ。ホンマかいな? 体が資本のプロ野球選手で、そんな食事をしている選手なんか聞いたことがなかったから驚いたよ」
私と隣にいた編集担当者が思わず笑ってしまった。野村氏が続けた。