バッターボックスで阪神ファンからペットボトルを投げつけられた
「阪神時代の97年にファン投票1位で選んでもらって出場したオールスターゲームです。そのシーズンは成績が悪くて、1打席目にバッターボックスに入ると阪神ファンからペットボトルを投げつけられ、応援のトランペットさえも吹いてくれなかった。そのときのショックというのは未だに忘れられないんです。選手は常に一生懸命やっているので、ファンのみなさんは選手がどんなに不調であっても応援してもらいたいです」
「新庄劇場」は06年の彼自身の引退をもっていったん幕が下ろされたが、来年からは監督として「新庄劇場・第2幕」がスタートする。どんな選手を新たに発掘し、スター選手に育て上げていくのだろうか。モチベーターとして選手を乗せる姿がイメージできるが、野球理論にも期待ができる。
ゴールデングラブ賞を10度受賞、新庄のたしかな守備理論
今年の2月、阪神の春季キャンプをスタンドから観戦した新庄は、こんな指摘をしていた。
「外野手の構えからまったくダメ。みんなヒザに手をついて守っている。あの構え、あのスタートだからエラーをする。大事なのは瞬間的な動き。打球が来る前に動かないと。(捕球可能な範囲が)4メートルくらい変わる」
現役時代、守備の名手の証であるゴールデン・グラブ賞を10度受賞した裏には、たしかな理論があることも証明されている。そこにエンターテイメント性を取り入れた「新庄流」は、球界に新風を吹かせてくれるはずだ。
「新庄は長嶋と同じで直感力が鋭い」
当時はあり得ないと思いつつ、「もし新庄が監督になったらどうなりますか?」と野村氏に聞いてみたことがある。野村氏はふっと笑みを浮かべながらこう言った。
「彼は長嶋と同じで直感力が鋭い。感性が動物的で優れている部分を活かせば面白いかもな。ただし、一歩間違うと独善的になるから、参謀に誰を置くかが重要だろう」
ただし最後には、「まっ、彼が監督になることなどあり得んだろうが」と言い添えることも忘れなかった。
その新庄は、恩師でもある野村に対して、自身のInstagramにこんな言葉を残した。
「野村克也監督へ こんな僕が監督になれた事を改めて報告してきました。大きな空から僕の采配、選手教育を見届けて下さい」
天国の野村はどんな言葉を彼に返すのか。おそらく最初は、「新庄を監督に据えるなんて、日本ハムのフロントは頭がどうかしちゃったんじゃないのか?」とボヤくに違いない。だが、それに続けて、「失うものは何もないやろ。お前さんが考えている通りに、自由に、伸び伸びやってみろ」と激励するはずだ。
日本ハムを選んだ03年同様、5位からスタートする新庄日ハム。来年は春季キャンプから、「ビッグボスSHINJO」が12球団一の注目を集めることは間違いない。野村氏をして「宇宙人」と言わしめた新庄野球がどう花開くのか、きっと恩師も空から見守っている。
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