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「長嶋と同じで直観力が鋭い」日ハムのビッグボス新庄剛志(49)の“監督力”を見抜いた“ノムさんの言葉”「感性が動物的で優れている、ただし独善的になると…」

「長嶋と同じで直観力が鋭い」日ハムのビッグボス新庄剛志(49)の“監督力”を見抜いた“ノムさんの言葉”「感性が動物的で優れている、ただし独善的になると…」

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2021/11/10
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 このスタイルを確立させることができたのは、メジャーに移籍した3年間による影響が大きい。見た目の派手さだけでないクレバーなプレーや、チームの士気を上げるガッツあるプレーによって、新庄は言葉の通じないメジャーのなかで仲間から信頼を勝ち得ていた。「個性を出して目立つためには、プレーの質を向上させてみんなを認めさせるしかない」。新庄がアメリカで得た一番大きな教訓だった。

「人気、実力ともにパ」の時代の変遷を担った新庄という存在

 もう1つ見逃してはならないのは、野村との出会いだ。阪神という人気チームゆえの自己規制に加え、プレーに自信が持てないでいた新庄を、野村はあえて自由に伸び伸びやらせた結果、一皮もふた皮もむけたプレーヤーへと成長していったことも大きい。

野村克也氏 ©文藝春秋

 新庄が日本ハムにやって来たとき、「これからはパ・リーグの時代です」と断言した。当時は巨人を中心に野球界は回っていただけに、この発言は異質に聞こえた。だが、04年に日本ハムにダルビッシュ、06年に楽天に田中将大、09年に西武に菊池雄星、12年に日本ハムに大谷翔平と、甲子園で活躍したスター選手が次々とパ・リーグに入団。パ・リーグを大いに盛り上げた。

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 さらに日本シリーズでは04年から20年までの17年間でパが日本一になること14回、セはわずかに3回だけ。かつて「人気のセ、実力のパ」と言われていた時代から、「人気、実力ともにパ」の時代へと変貌していった。この時代の変化に新庄の果たした役割は大きい。

僕がプロ野球を変えていきたいなという気持ちで帰ってきました」

 引退してから15年後の21年秋――。新庄は日本ハムの監督として球界復帰を果たした。引退後はインドネシアに住んで、野球界とは一線を置いていたが、昨年、突如としてトライアウトを受けて世間をあっと言わせた。その1年後の監督就任。「僕がプロ野球を変えていきたいなという気持ちで帰ってきました」と記者会見で話した。

新庄新監督の就任会見 ©時事通信

 今年の日本ハムはチーム成績が5位に終わり、3年連続Bクラスと低迷している。加えてシーズン途中に中田翔の暴力問題が起こり、チーム内に暗い影を落としていた。それだけに新庄に対しては期待する声が大きい。新庄が日本ハムへの入団を決めた03年秋、当時の白井一幸ヘッドコーチは、「古い体質から脱却したいと思っているとき、新庄のような考え方を持っている選手がいることは、転換期を迎えたチームにとって非常に大きかった」と語っている。

 今の日本ハムには、ルーキーながら10勝を挙げて東京オリンピックの代表選手となった伊藤大海や、将来のスラッガー候補・野村佑希といった若手の有望な選手がいる一方、清宮幸太郎や吉田輝星といった甲子園を沸かせたスター候補生が伸び悩んでいる。彼らにどんな指導をしていくのだろうか。選手に対して、新庄はこんな思いを持っている。06年の日本シリーズで日本一になった翌日の引退会見で、「一番の思い出は?」と記者に質問された新庄は、こんな胸の内を明かした。

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