昇給は遅く、初任給も安い日本のメガバンク
1990年代後半以降、外資系金融機関が日本国内で“ハゲタカ”と呼ばれて莫大な利益を上げる中、都市銀行統合により誕生したメガバンクや大手証券会社は、この欧米型投資銀行業の拡大を目指し、新規部門の開設や外資系企業の買収などを行って来た。
しかし20年が過ぎた今でも、グローバルM&Aアドバイザーランキングでは、北米は1位:ゴールドマン・サックス、2位:JPモルガン、西ヨーロッパは1位:ゴールドマン・サックス、2位:モルガン・スタンレー、中東・アフリカは1位:バークレイズ、2位:ロスチャイルド、アジア太平洋でも1位:JPモルガン、2位:ゴールドマン・サックス……と欧米系金融機関が上位を独占。国際化を目指した日本のメガバンクも大手証券会社も姿が見えない状況だ(ブルームバーグ「M&Aレビュー」2020年第1四半期)。
日本のメガバンクも大手証券会社も、あくまでも一部門として投資銀行業等を行っているため、開示される全体の平均年収を見て欧米系金融機関と単純に比較することは難しい。しかし三井住友銀行の初任給は大卒総合職で20万5000円(公式サイト)。みずほ銀行の平均年収は729万3000円(対象約2万8000人、平均勤続年数14・5年、平均年齢38・1歳=2021年3月期有報)。
昇給も遅く、「年収が1000万円を超えるのは30歳を過ぎてから、2000万円を超えるのは40代後半の執行役員クラスに昇進してから」(国内銀行中堅行員)という。国内の上場企業の中で見れば平均年収が高い方だが、ゴールドマン・サックスやJPモルガンには遠く及ばない。
これは単に企業の業績の差ではなく、その構造に原因があるという。欧米系金融機関は部門責任者が収益に対して責任を負い、採用も決めている。部門責任者も経験した前出の元役員はこう話す。
「責任者としては何よりも部門の利益を出すことを求められるため、いい人材をいい時期に雇用したい。成果を出した部下は報酬を上げ、そうでなければ解雇する。しかし日本の法律は終身雇用を前提として、一度雇用すれば解雇が難しい。収益が落ちた時に人員を減らせなければ全員の報酬水準を下げるしかなく、それでは優秀な人材が辞めてしまい、さらに収益が上がらなくなる。
年功序列賃金も若い人のモチベーションを下げる要因です。経営者としては日本の制度は辛いはずですが、変えようとしません。解雇できないということだけではなく、成果を上げても上げなくてもボーナスの額がほぼ変わらず、若い人には大きな仕事を任せないなど、その構造を変えなければ外資系に追いつくことは不可能でしょう」