洗濯家の中村祐一さんは、長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」の三代目。「洗濯から考える、よりよい暮らし方」を提案し、“洗濯王子”の愛称で親しまれています。今回はウールのセーターを洗う際のポイントを解説していただきました。

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「セーターってドライで洗える? 普通に洗ったら目が詰まってキシキシっぽくキツくなっちゃったんだよね」

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 先日、離れて住む僕の妹からLINEが届きました。

洗濯家の中村祐一さん ©中村祐一

 一緒に送られてきた洗濯タグの画像も見ると、ウール100%のニットで、「家庭での洗濯禁止」という絵表示がついていました。クリーニングの仕事についていないとはいえ、実家がクリーニング屋の僕の妹ですら、ウールのセーターをうまく洗うためのポイントが分かっていない。

 となると、キチンと洗濯するためのポイントが、多くのご家庭ではさらにわからなくなっているのではないでしょうか?

ウールが「縮む」原因とは

 ウールのニットが「家庭での洗濯禁止」になる理由の多くは、洗濯をすると縮んでしまうから。

 ウールなど動物の毛でできた繊維は、表面が「スケール」と呼ばれるウロコ状の層になっています。そして、水に濡れると、水分を発散させるためにスケールを“開く”性質を持っています。キャッチコピーなどで、ウールが「呼吸している」なんて表現されるのは、スケールの性質を指しています。

洗濯桶にバツ印が「家庭洗濯での洗濯禁止」の表示。 ©中村祐一

 スケールのおかげで、着用中には蒸れを抑えて快適な着心地が得られますが、洗濯の時にはデメリットにもなります。ニットを濡らすとスケールが水分を含んで開き、スケール同士がひっかかりやすくなります。その状態でニットが揉まれると、スケール同士が絡み合ってしまうのです。

 スケールが絡み合って離れなくなり、固くなった状態を「フェルト化」といいます。このフェルト化が起こると、ウールは縮んでしまいます。「水分を含んだ状態」「揉まれる」という条件がそろった「水で洗う洗濯」は、ウールが縮む状況そのものなのです。