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女性に抱きつくことに関しては、対応に悩んでいる

 一方で、知的障害のある男子が女性の職員に抱きつくことに関しては、対応に悩むことも多いという。

 松下「中学や高校になって、身体も大きくなり、もう気軽に誰かに抱きつけるような年じゃないのに、女性の職員に抱きついてしまうというケースはあります。

 相手を選んで抱きついているというのは、こちらにも分かります。知的に重度の子ならまだしも、そこまで重度ではない子が、年齢の若い女性を選んで抱きついている様子を見ると、それはさすがにダメだろう、と思います」

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 年齢的には二次性徴の始まる思春期を迎えているわけだが、そうした抱きつき行為に、性的な欲求は含まれているのだろうか?

 松下「正直、分からないです。母性を感じたいだけなのかもしれません。抱きつきを繰り返す子どもに対しては、『それ、他の場所でやったら逮捕だよ』と伝えることもあります。異性の顔をじっと見つめる凝視についても、性的なものを求めているのか、それとも父性や母性を求めているのか、よく分からない。

 自分の行為や気持ちを説明できるほどの力はないけれども、責任能力はなくはない。抱きつくことをガマンできるかといえば、できない。そういう子どもたちが一番トラブルになりやすいです」

それぞれの職員が責任を持って考え、行動するしかない

 知的障害のある子どものそうした行動について、事業所としてはどのように対応をしているのだろうか。

 松下「正直、対応は行き当たりばったりです。毎回そうした行動をするわけではないし、抱きついて怪我をしたり・させたりするわけでもないので、職員の間で議論する時間もない。他に優先順位の高い業務がたくさんあるので。

 放デイの運営に関して、厚労省のガイドラインはありますが、一般的なことしか書かれていないので、現場ではあまり参考にならない。その子に対しては正解でも、一般化すれば間違いである、ということもあります。マニュアルやガイドラインから外れる状況はざらにあるわけで。

 そういう時にどうするのかについては、それぞれの職員が責任を持って考えて、行動するしかない。自分の進退をかけてやっているな、と感じる時もあります。正しいかどうかは分からないけれども、こうするしかない、と自分で決めてやっていくしかない」