明確な正解のない問題に対しては、「職員として」というよりは、「1人の人間として」ぶつかっていくしかない、ということになる。ただ、職務の範囲を超えて全人的な関わりを要求されるのは、職員にとっては非常に大きな負担になるだろう。
性に関する問題が、社会で生活していくためのルールに関する問題だとすれば、明確な指針がないまま、場当たり的な対応になっている状況、支援の内容が職員個人の判断や責任によって、属人的に決められてしまっている状況は、健全であるとは言い難いだろう。
異性の服や下着への執着という問題も
抱きつきの他には、異性の服や下着に対する執着も問題になることがあるという。
松下「異性の服や下着への執着についても、性的なものが理由かどうかは分かりません。異性の着ている服が羨ましいだけなのかもしれない。ただ、こちらとしては、勝手に他人の服に触らないよう、促していくだけです。
現場では、他の子どもの服に触れられるような状況を作り出さないことも意識して行っています。着替えなどの服は、カギのついた部屋に入れて、他の子どもが触れないようにする。ボタンなどを誤飲されるリスクをなくす、ということもありますが、なるべく手の届くような場所に置かない。
ただ、着替えの時など、どうしても他の子どもの前に服を出さなければならない場面で、そういう問題が起こります。なるべくそうした時間を少なくすることを心がけています。性は人間の三大欲求に関わる部分なので、行動を完全にやめたり、欲求そのものをなくしたりすることは難しいと思います。
ただ、抱きつきや凝視、異性の服への執着などは、放デイにいる今だから許されることなので、少しずつ、長い時間をかけて、『人前ではなく、家の中で』といったルールを守れるように伝えていくしかないと思います」
【前編を読む】肉の感触を確かめるように触れる、人前で性器をいじりたがる…福祉・教育現場で頻発する“性トラブル”のリアル