「アジア人がこんな舞台に立っているなんて、俺たちにとっても誇りだよ――」
今年7月、私は「クロスフィット・ゲームズ」(以下、ゲームズ)という大会に出場するため、単身アメリカに渡った。「ゲームズ」は世界から30万人が参加する“クロスフィット”と呼ばれるフィットネスの権威ある大会だ。
競技としてのクロスフィット、その世界大会「ゲームズ」へ
クロスフィットという言葉自体は日本でも聞いたことがある人もいるのではないだろうか? クロスフィットとは、歩く・走る・起き上がる・跳ぶなどの日常生活で行う動作をベースに、それぞれを万遍なくトレーニングすることで、基礎体力アップ等を図るトレーニング方法のことだ。
いわゆる重いウエイトを上げるような筋力トレーニングだけでなく、自分の身体を操る体操的な要素や、バイクやトレッドミルを使った有酸素的な要素も求められる。全身体能力を効率よく強化できるトレーニング法で、発祥地のアメリカでは軍や警察の育成プログラム、サバイバルトレーニングにも取り入れられている。
一方で「ゲームズ」は、本来はトレーニングの一種であるクロスフィットを、スポーツとして昇華させた竸技の世界大会である。世界中から予選を勝ち抜いた男女数百人が集い、その成果を競う。世界大会ということもあり、参加のためのハードルは決して低くはない。今大会の場合、アジアからの参加者は私を含めても2名だけだった。
そんな状況もあり、大会期間中には冒頭のような声を多くのアジア系アメリカ人の方々からかけてもらえた。大会そのものの規模の大きさや熱狂度もさることながら、そんな風にかけてもらった言葉が一番印象に残っている。
サラリーマンからトレーナーへ…再燃した熱
私は2013年にトレーニングの一環としてクロスフィットに出会った。
当時、ジムのスクリーンで流れていた「ゲームズ」の映像を見たことで、朧気ながらこの大会に憧れを抱いた。様々な人種の、様々な体型・体格の選手たちが、多種多様なトレーニング種目に競技として挑んでいく――。その姿を見て、「こんなに身体全ての能力が問われるスポーツがあるのか!」と思い、純粋にかっこいいと思ったのだ。
ただ、当時の私は商社勤めのサラリーマンの立場だった。
突然アメリカで行われる世界大会を目指すというのはあまりに現実からかけはなれており、なかなかすぐに動き出すことができなかった。ただ、その後紆余曲折を経て、昨年にトレーナーとして独立したことで、再び「ゲームズ」への熱が戻ってきたのである。