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「言葉のチョイス」は何より大事

――試合前のミーティングで、試合に出ない選手も含めて全員をロッカールームに入れて説明するやり方も独特です。

「僕、試合前の何分前に集まってくれとか、実は言ったことがない。自然とみんなが集まるようになったんです」

――ここでは「下手でもいい。自分がチームの力になろうと思うヤツとサッカーがしたい」とか熱い口調で、選手の心に訴えているそうですね。

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「選手たちはどこで伝わるかと言えば、目か耳じゃないですか。文章なら目にしか入らない。でもしゃべることって耳と、その人の雰囲気も含めて目と、そのダブルで入ってくる。だから伝えるにしても、伝達方法として凄く効果がある。

 しゃべることは、絶対に分かりやすくないといけないし、熱がないといけない。ぶっきらぼうに言っただけでは、伝わるものも伝わりませんから。たとえば『お前ら、何やっとんねん!』というのも、大切な言葉なんです。回りくどく言うよりも、そっちのほうが分かりやすいし、しゃべっている人の熱も感じてくれますから。言葉のチョイスというのは、監督であるなら練習メニューを決める、試合で誰を起用するというのと同じぐらい、いやそれ以上に大事だと僕は思っていますね」

やってよかったなと思えるグループの一員でありたい

――それこそ元日本代表監督の岡田武史さんは「言葉というのは、言霊というように、力がある。言葉をどう使うかで、選手の頭を打つのか、心を打つのか、が違ってくる。心を打たれた選手は変わるが、頭を打たれても変わらない。(何を言うかは)相当考えるし、言葉使いも考える」と言っています。

「そのとおりだと思います。『きょうは4-4-2で行くぞ』だけなら、メモで渡したっていい。僕が真剣に話すことで、選手が『その情熱に応えたい』『それ以上のものを出したい』って思ってくれたらいい。僕は選手たちに『意味がないとミーティングやらないから』と伝えてます。逆に言ったら、意味があると思ってミーティングをやっている。せっかく時間を共有しているわけだから、意味のある時間にしなきゃいけない」

©杉山拓也/文藝春秋

――曺監督はどのようなリーダーでありたいと考えていますか?

「いや、別にリーダーでいたいとは思っていません。ただ仕事をさせてもらうのであれば、やってよかったなと思えるグループの、その一員でありたい。僕、サッカーがやっぱり好きなんです。嫌いになったらやめると思いますよ(笑)。サッカーが大好きだから、探究心は持っているつもり。そこがないと結局、人ってついてこないんじゃないかなとは思います」

◆“異彩”を放つために必要なこと 湘南ベルマーレ・曺監督のやり方 #2
http://bunshun.jp/articles/-/4996 につづく