今季のJ2を制した湘南ベルマーレの代名詞となっているノンストップ・フットボール。90分間エネルギッシュに戦い抜く“止まらない”サッカーのスタイルのみならず、熱血漢のリーダー、曺貴裁(チョウ・キジェ)監督自体が止まらない。
サッカーに対する、指導に対する探究心を高め、常に新たな発見を求めてきたからこそ「マンネリ」を寄せつけない。
チームに、そして何より自分自身に刺激を入れ続けている。(#1からつづく)
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自分に「マンネリ」という言葉はない
――J1からJ2へ降格した今季、湘南を率いるのは6シーズン目となりました。クラブからの続投要請にも当初、引き受けるかどうかは迷われたと聞きました。
「クラブからは有難いオファーをいただきましたけど、僕が引き続き監督をやることでこのチームがどういう方向に行くかをまず考えました。近年(昇格と降格を)繰り返してきて、ただ単に『J1昇格、J2優勝』を目指すとしても、その言葉が選手やチームに説得力を持つとは思わなかったので。そのなかでやっぱり新しい何かを見つけよう、と。そう自分のなかで決めたので、引き受けました」
――長期政権ともなると、一方でマンネリ化の怖れも出てくるとは思うのですが、いかに打破していこうと?
「まずもって、自分にマンネリはないです。もし自分の言葉が選手に明らかに響いていないなと思ったら、すっぱりこのチームの監督を辞めます。クラブのためにも、選手のためにも、自分のためにも良くない。『このチームが好きだから、できるだけ監督にすがりつこう』みたいな考えは、はっきり言って僕にはない。言葉が響いているかどうか、そこは常にアンテナを張っているつもり。そう(マンネリ)じゃないという確信があったうえで、新しいトライをしてチームを引き上げていくことができるんじゃないかと考えました」
――今季も菊池大介選手(浦和レッズ)、三竿雄斗選手(鹿島アントラーズ)とチームを引っ張ってきた選手が引き抜かれるなか、一方で市立船橋高から加入した杉岡大暉選手、2年目の山根視来選手、齊藤未月選手たち若手を育てつつ、結果を出していきました。
「企業が戦略を立てるとき、たとえばここに何十万人の方が住んでいて、こういうものを出せば売れるとか論理から結論を導く演繹法で考えますよね。でもそれをもとに(チームづくりを)やってしまうと難しいと思うんです。だってこの世界は、今まであったものが今年からはなくなることがあるわけですから。そう考えると人口は少ないけど、じゃあこっちで売ろうよ、みたいな考え方があっていい。そういうやり方を探すのに時間はかかった。今、別に探し切ったわけじゃないけど、クラブとして新しい形をつくっていかないといけないという思いはありました」