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実績のない若手の使い方

――実績のない若い選手、新しい選手をどんどん起用していくなかで、その難しさもあるとは思うのですが。

「最初からフィットする選手もいますけど、時間がかかる選手もいます。調子の波もあります。試合に出すということは、世間の目に触れるということ。でも見ている人は、この選手がどんな練習しているかどうかまでは分からない。あくまでその試合で何をしたか。試合で良かったときはそれでいいとしても、良くなかったときにどんどんパフォーマンスを崩したり、サッカー選手として自信をなくすことがあるかもしれない。その状況で、また試合に出すことはあんまりよろしくない。だから普段から、この選手がどういうことを考えて、どうやっているかを知っておく。たとえその試合でパフォーマンスが悪くても、ここで使うとまた上がっていけるだろうというタイミングは考えますね。その答えというものは、僕のなかで持っています」

――3試合を残しての優勝でした。若手、中堅、ベテランがかみ合い、全員で勝ち取った栄冠。チームにどんな成長を感じましたか?

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「縦に速く、人数かけたカウンターとかモビリティのある目に見えるものを、みなさん湘南スタイルだと感じていると思うんです。でも今年、僕が感じたのは目に見えないところでの成長でした。『ここにお前がいたから相手にシュートを打たせなかったんだよ』とか逆に『ここにお前がいたからウチの得点に結びついたんだよ』とか、目立たないプレーに選手が喜びを感じてくれれば、チームは強くなるんだという実感がありました」

小規模クラブが生きていくための“色”

――優勝を決めた試合後の記者会見では「成長できそうな選手をどんどん世の中に送り込むサイクルを続けないと異彩を放てない」というコメントもありました。

「最近のフットボールって、全部の要素がないと勝てない。ただ、異彩と言ったのは『ほかのチームがこうやってうまくいってるから、じゃあウチもやりましょう』では、湘南みたいな小規模のクラブが生きていくための“色”が出ない。ウチはやっぱりダイナミックに毎年変化を重ねながら、その年の最大値を出していくという見え方にしたいんです」

©杉山拓也/文藝春秋

――毎年変化しながら、全員でチームの最大値を出していく。確かにその湘南独特と言えるカラーは、今年、明確になったようにも感じました。

「100のうち80しか出せなかったら、勝つ確率が減ってしまう。監督としたら、どう100を出せるかを考えますよ、毎試合。だからメンバーをいろいろと入れ替えるのも、最大値を出すためのロジック。やっぱり全員でやらなきゃいけない」