第49回衆議院選挙ではベテラン国会議員の苦戦や落選が伝えられ、これまでにない世代交代の動きが見られた。また投票率は依然低かったものの、SNS上に「#投票へ行こう」など若い世代による選挙関連のハッシュタグが多数つくられ、投票キャンペーンも盛り上がりをみせた。さらに経済やコロナ対策と並んで「選択的夫婦別姓」といった女性の権利に関わるテーマも選挙の大きな争点となった。今回の衆院選に見られたこうした特徴は、2021年を象徴しているように感じる。つまり、女性差別や女性蔑視、また「昭和の価値観」が支配する世の中にNOが突きつけられるケースが目立ったのだ。
この流れの源には、森喜朗氏(東京オリンピック・パラリンピック組織委員会元会長)による、あの発言があるのではないだろうか。
「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」――。
中京大学スポーツ科学部教授で、東京2020の組織委理事も務めた來田享子(らいた・きょうこ)さんは森氏の失言によって「かつてない現象が起きた」と語る。いったいそれはどういうものなのか。そして、東京2020は私たち日本人に何を残したのだろうか。あらためて考えてみたい。
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各国の五輪ボイコットの可能性まで考えた
――來田さんが組織委理事に選ばれたのは、2月3日に森元組織委会長が、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言して騒動になった後、橋本聖子さんが会長に就任して女性理事を大幅に増やしたタイミングでした。まず、あのニュースを見てどう感じましたか。
「森さんの発言については当日の夜ニュースで知りました。あ、と思って、こういうこと言っちゃったのかって。オリンピックでこの発言はやはりまずいよなと。世界からボイコットされる要因にならなければいいなと直感的に思いました」
――各国からのボイコットの可能性まで考えたのですか。
「国際的なスポーツ界において、ジェンダーに対する取り組みはここ10年から15年かなり鋭く言われてきましたから。一番心配だったのは、IOC自身が2018年にジェンダー平等の再検討報告書を出していて、そこには2024年を目標に絶対達成しますよと書かれていたんですね。その途中である2020での発言だったので、これは大きなことになるかもしれないと思ったんです」