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森喜朗氏の「女性の会議は長い」発言は日本の何を変えたのか…男性も批判の声をあげた理由

來田享子教授と振り返る「東京五輪問題」#1

2021/11/14
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「自分は差別していないと思うのに、差別したかのように受け止められることは四六時中あって、これは誰にもあるものです。ない方がおかしい。自分が差別したことなんかないと思って生きていくほど恐ろしいことはないですよ。ただ、森さんもですが、その価値観の中で揺れ動く自分をきちんと捉えることができていない。やっぱり政治家、リーダーとしてはそこの部分の資質に欠けていたのだと思います」

――いやあ、これってすごく本質的なポイントですよね。自分の中で意識して気をつけようと思いながら、結果的に差別的な発言に受け取られてしまうとか、誰もが陥る話だなと思います。

「そうなんですよね。ただその姿勢自体を問題視して、ネットで叩いたり、上司を批判したり、そういう攻撃をすることでかえって解決は遅れてしまうんですよね」

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――なるほど。批判から始まる議論になりがちですよね。

「そう。誰もが抱く葛藤だよね、という風にこちらも受けとめたうえで良くしていこうとしないと、人の心の中の差別問題というのは解決が難しいと思うんです。そこは間違ってはいけないところだと私は思っています」

「組織委員会は日本社会の縮図なのだと思いますよ、やっぱり」

――森元会長の発言は、日本が「ジェンダー平等」を重要な理念に掲げるオリパラを開催するからこそ議論の広がりを見せたと思います。今回東京2020を通して少しは前進しましたかね。

©JMPA

「いやあ。まだぎこちないですね。みなさん意識はしている。差別はいけない、なくさなくてはいけない、オリンピックはそのためにあるんだという風に、たぶん多くの組織委員会のスタッフも理事も思っているんですね。少なくとも表面上は」

――表面上は(笑)。

「でもやっぱりまだちゃんと理解してくれてないよね、という反応は随所に見られます。SNSでも裏アカウントで誹謗中傷を発信する人っているでしょう。二つの顔を持つ人がいるんだと思います。日本の組織全体が抱えている問題ですよね。だから組織委員会は何も特別な世界じゃなくて、日本社会の縮図なのだと思いますよ、やっぱり」

#2に続く

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