「いわゆるオレオレ詐欺などの出し子や空き巣、強盗などを行っていました。薬物のプッシャーにも手を染めていました。こうした犯罪行為を主犯格の指示の下、複数人で行っていたのです。若い子は主に使いっ走りです。手に入れた金の9割は指示役が取ってしまい、実行した子分たちは1割程度しかもらえません。それでも先輩には逆らえない。かなり筋の悪いグループですよ」(同前)
被害者が“救い”を求めた「モルモン教」
なぜ「挨拶もしっかりした好青年」の伊藤さんが、このグループと関わりを持つようになったのか。取材を進めると、伊藤さんが頼っていたという高齢男性にたどり着いた。男性は「彼はなんとか更生しようともがいていた」と、伊藤さんの半生について語ってくれた。
「彼は家庭環境が複雑でね、私が父親代わりだったんですよ。私が彼と出会ったのは今から10年程前、モルモン教の教会の縁で出会いました。私は入信していませんでしたが、彼は熱心に教会に通っていた。なんでも、お金がないときに、たまたま出会ったモルモン教徒で20代のアメリカ人に、カレーライスをご馳走になったことが入信のきっかけだったようです。
彼は熱心に宗教の活動に参加して、肉体労働や人が嫌がる雑務も引き受けていました。彼の住んでいる地区のトップの夫人も彼のことを気に入って『いつかはアメリカに留学させたい』とも話していたくらいですから」
組織を抜けて、自殺未遂をしたことも
男性によると、伊藤さんはモルモン教に入信する前に「ヤクザのようなことをしていた」という。
「テキヤで祭りの出店を仕切ったり、新宿で闇金の取立てをしたりね。でもある時、闇金の取り立てで借主の娘を“売らせた”ことがあったそうなんです。それを苦に借主の奥さんが自殺したと。彼はよほどショックだったみたいでね。それで組織を抜けて、彼自身も自殺未遂をしたそうです。そういうこともあって、モルモン教に救いを求めたんでしょうね」
モルモン教の教会で男性は伊藤さんと出会い、伊藤さんは男性に親しみを抱くようになった。出会ってからすぐ、自身の身の上話をする間柄になったという。