女流ABEMAトーナメントの予選リーグ対局日当日。
控え室に行くと、山口恵梨子ちゃんがスーツケースを持っていた。作戦会議室用の応援グッズや、収録中に栄養補給を出来るようなものを用意してくれるとは事前に聞いていたが、まさか海外出張用スーツケースいっぱいに入れてくるとは思っていなかった。
めちゃくちゃ光る応援グッズを持ち込んだ我々のチーム
「はい、これ応援用の!」
と出てきたのは、金色のポンポンとタンバリン。
「押すとね、光るの!」
なるほど、めちゃくちゃ光る。
応援グッズを持ち込んだのは我々のチームだけだったらしく、念のためスタッフの方に使って大丈夫かを確認した。
「大丈夫ですよ! でも最初からよりは、ちょっとずつ出していきましょうか!」
確かに最初から使うには、刺激が強すぎるかもしれない。
恵梨子ちゃんは、たまに誰も思いつかないことをしてくれるから面白いのだ。
恵梨子ちゃんが固まっているのを見て…
予選リーグは3チームの総当たり戦を1日で行い、上位2チームが予選を通過できる。
チーム西山は第2、第3試合が出番で、対戦相手のチーム加藤は先に1試合目を戦っている状態である。自分たちにとっての初戦で、既に戦いを経験している相手に挑んでいく緊張感は凄まじいものだった。
「早く1局指して落ち着きたい」と、緊張でそわそわとせわしなく動き回っていた。
どこか宙に足が浮いている様な感覚が、1戦目の序盤を見てなくなった。
超早指しでは、長時間に比べて当然ミスの頻度が高くなる。ミスはミスだからしょうがない。
恵梨子ちゃんが固まっているのを見て、妙に落ち着いた。隣に座る西山朋佳さんが同じようなタイミングで「いま私、すごく落ち着いています」と、そっとつぶやいた。