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「いま私、すごく落ち着いています」隣に座る西山朋佳さんがそっとつぶやいた

「いま私、すごく落ち着いています」隣に座る西山朋佳さんがそっとつぶやいた

女流ABEMAトーナメント「チーム西山」レポート

2021/11/15

genre : エンタメ, 芸能

note

負けもプラスになることがあるからチーム戦は面白い

 終局し、恵梨子ちゃんを迎えにオーダー部屋に移動する。元気に帰ってきてほしいと思って、応援グッズを持っていった。今度はスタッフさんの確認は取らなかった。ここで使うために、持ってきてくれたものである。

 1試合目のキーパーソンはやはり恵梨子ちゃんだった。6局目の勝利は劇的で、誰をも感動させただろう。

 7局目はそのパワーを吸収した西山さんが、チーム勝利に必要な5勝目をもぎ取ってくれた。私にはその時の西山さんが「元気玉をもらったスーパーサイヤ人」に見えていた。

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 かくして我々にとっての初陣は、無事勝利することができた。

 初めての持ち時間で、初めての環境で指すというのは想像よりも難しい。その中では思っていたよりも集中して対局に臨めたと、個人的には思う。やっぱりあの1局目は私たちチームメイトに良い影響も与えてくれたのだろう。負けもプラスになることがあるのだから、チーム戦は面白い。

恵梨子ちゃんが持ってきてくれた光るタンバリン(提供:山口恵梨子女流二段)

自分の中では信じられない大逆転負け

 30分ほどあけて、チーム渡部との第3試合が始まった。

 1局目は前回と逆に、序盤で西山さんがハッキリ良くなり、そのまま押し切った。相手の渡部愛さんらしからぬ将棋で、やはり1局目は難しいのだと感じさせられる。

 2局目で私が出ることが決まった。相手は新人の内山あや女流2級。

 前回の勝ちと、1局目の西山さんの快勝で浮足立つ中、監督の藤井猛九段が「ちょっとみんな落ち着きましょう」と冷静に諭してくれた。

「ちょっとうまく行き過ぎてるから、逆に危ない」

 その言葉が真理をついていて、私は逆転負けをした。自分の中では信じられない大逆転負けだった。チームメイトの顔をよく見られない。特に藤井九段の顔は見られなかった。
 続いて恵梨子ちゃんも敗れ、チームスコアは1-2。