1話目と同じことを、作品全体を通してやる
――内容的にはどんな違いがありますか?
田岡 「ゲッサン」連載分は、時間が流れています。主人公・りえ子の受験生時代を春から順に追っているので、高校生時代しか描いていません。いまは高3の秋を厚めにやっている感じですね。Twitterのほうは、その時々の季節に沿ったネタをやっているので、いろいろな時系列の季節ネタを描いています。
――掲載時期とネタが同期する歳時記的な内容ですね。新聞4コマなどによく見受けられる形式です。それが年齢順ではなく、順不同なのはどのような理由でしょうか?
田岡 『ラスト・さんぽ』が「昔を思い出す」という、ノスタルジーを感じさせる内容だったんですけど、それを作品全体でできないかな、と思ったからです。言ってしまえば、1話目と同じことを、作品全体を通してやる、ということです。
――「ノスタルジー」が、ひとつのテーマになっているわけですね。
田岡 あと、僕は『それでも町は廻っている』の大ファンなんです。
――石黒正数先生の。
田岡 そうです、あのマンガは時系列がいろいろと入れ替わっていく話で「そういうこともできるんだな」と、すごく感銘を受けました。自分のマンガ観が更新されたというか、上書きされてしまったような感じでした。
――『それでも町は廻っている』は順不同の時系列の中に、さまざまな伏線を散りばめた作品です。
田岡 『今日のさんぽんた』でも、3巻の最初の話(「10歳9月 隠し物」)と最後の話(「10歳9月 宝物」)は、そういうことを意識しています。
――これは3巻の最初と最後にくるように計算していたんですか?
田岡 普通は雑誌掲載順に単行本に収録していくんですけど、実は結構自由が利くんですよね。なので、単行本作業の際に、収録順を再構成します。「10歳9月 隠し物」は、あえて2巻に収録しなかったんですよ。これは使えるな、と思ったので。
――なるほど。「ゲッサン」、Twitter、単行本がそれぞれ別の見え方になる仕掛けになっているんですね。
写真=文藝春秋