中学受験の親に対するアドバイスは巷にあふれている。ぜんぶ聞いていたらイソップ童話の『ロバ売りの親子』になってしまう。取捨選択の視点として私が伝えたいのはただ一つ。情報過多時代の子育ての大原則は、「迷ったら引き算」だ。

「やらないよりはやったほうがいいかも」を積み重ねていったらきりがない。一方、子どもの時間も体力も有限だ。負荷が多すぎて子どもが潰れてしまうよりは、多少余裕があるくらいのほうが子どもはいきいきする。偏差値よりも子どもの目の輝きを見てほしい。その視点から私は『なぜ中学受験するのか?』を著した。

「そんなの理想論だ。現実は甘くない」という批判もあるだろう。しかし教育虐待の闇も取材してきた私に言わせれば、子どもをギリギリまで勉強させるチキンレースに参戦することほど愚かなことはないというのも、れっきとした現実なのだ。

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 課題の量の話だけではない。個別指導塾にも通わせたほうがいいか、新しい問題集をやらせたほうがいいか、オプションの対策講座も受けたほうがいいか、受験雑誌に書かれていた漢字記憶法をやらせたほうがいいか……。迷うくらいなら、原則として「いらない」と判断すればいい。

 子どもの心身に余裕があれば、親が「いらない」と判断したものに対して、「いや、それはやるよ」と自分から言い出すかもしれない。だとしたらそれは存分にやらせていい。自分で選んだものは子どもだって一生懸命やれるし、だからこそ成果も出やすい。それをひとは「やる気」と呼ぶ。余裕がない状態にまで追い込んでいたら、やる気を出す暇もなくなる。