最低でも早慶以上の大学に入らないと生きていけないとか、いま勉強しておかないと大人になって惨めな思いをするなどと、小さいうちから散々脅されていれば、子どもは自ら勉強するかもしれない。でもそれは内発的動機としての「やる気」とは違う。恐怖から逃れる手段として勉強しているにすぎない。
そのパターンがいちど身についてしまうと、恐怖が人生の動機になってしまう。いまの偏差値は高くても、将来的には負の遺産だ。
親が新しい問題集や受験テクニック本を買ってきたら要注意
中学受験生の親にとって、待つことは、まるで荒行のようなもの。悟りの境地を目指すくらいの気持ちで取り組まないと難しい。でも子どもたちだって、日々自分と戦っているわけだから、親が先に音を上げるわけにはいかない。
子どもが並々ならぬ努力を続けている。せめて頑張ったぶんだけの成果が出てほしいと望むのは当然だ。しかし中学受験では、みんながそれぞれに精一杯頑張っているので、自分だけ頭一つ抜けることも考えにくい。
血のにじむようなわが子の努力が報われない場面に出くわすことほど親としてつらいことはない。そういうときに、待てなくなる。が、「ただでさえ良い結果が出ずに子どもが落ち込んでいるときに、親が新しい問題集や受験テクニック本を買ってきたら要注意」とは、旧知のプロ家庭教師・山本祐氏の弁。親が状況を変えようとして試みたことが子どもにとってはさらなる重荷になり、悪循環に陥ることがある。
模試の結果が振るわず落ち込んでいる子どもに親がすべきことは、子どもの代わりにままならない状況を改善してやることではなく、落ち込んでいる気持ちに寄り添うこと。それだけでいい。たとえば「ケーキ買ってきたからいっしょに食べよう」と言えばそれだけで、親の気持ちは子どもに伝わる。その安心感の中でこそ、子どもの目の輝きは一段と強くなって復活する。