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アイディアの「泡」と「根」

武田 書いているうちに、どんどん横に転がっていき、豪快に脱線して、いつの間にか枝葉が生えまくって、思わぬところに到着した、あるいはどこにも到着しなかったけど時間切れなのでここまでにしますね、という文章が自分もとても好きです。そういう、ある種の“不真面目さ”を体得している文章って、最近あんまり見かけなくなった気がします。

内田 不真面目なのかな(笑)、何かを書いてる途中で、自分の中の底の方からアイディアの「泡」みたいなものが浮かんでくるんです。「泡」が湧いてきた以上、底のほうにはアイディアの「根」のようなものがあるはずだと思って、潜って、掘り下げて、探ってゆく。

内田樹氏

武田 アイディアの泡を出すテクニックはあるんですか? 

内田 なんだろう。わずかな変化を見落とさないことですかね。曲がり角を今曲がっていった人のコートの裾だけがちょっと見えるってことがあるでしょう? アイディアのとっかかりって、そういうふうに視野の外縁部にチラッと見えるだけなんです。でも、何かが見えたら、「知的な動体視力」を働かせて、それを追っかけてゆく。

驚かされないために、こまめに驚く

武田 「知的な動体視力」は訓練で体得できますか?

内田 できると思いますよ。よく若い人たちには「驚かされないためにはこまめに驚くのがよい」と言ってます。「驚かされる」というのは受動態だけど、「驚く」は能動態です。「人こそ見えね秋はきにけり」と同じで、人が気づかないわずかな変化を感知する。わずかな変化がそのあと起きる世の中の大きな変化の予兆だったということはよくあるんです。だから、「風の音にぞ驚かれぬる」という態度でいることが知的動体視力を高めることにつながると思います。

 武田さんも人が見過ごしがちなかなり細かい点を拾って書いてますよね。『偉い人ほどすぐ逃げる』でもそうですけれど、武田さんはわずかでも違和感を覚えると、こだわりますよね。ふつうの人が面倒だからスルーするような「のどに小骨が刺さった」ような感じから書き起こして、エッセイ一つ仕上げるという書き方、よくされますよね。

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