豪華なシャンデリアに高級ソファーが据えられた広々とした店内を、ドレスで着飾った美女がせわしなく行き交う。VIP室では絶え間なく嬌声があがる。シャンパングラスを傾ける男性に、客を値踏みする女性の眼差し――。

 六本木のクラブXは男性にとって魔境だ。客は企業役員にベンチャー経営者などの堅気から、半グレや詐欺集団の幹部などブラックな面々たちとその素性は様々だ。目立つ客の共通点は、みな“金持ち”であることだ。

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「コレはたんまりもっているかも(笑)」

「おいレイ、あの客は何の仕事をしているんだ」

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 Xの支配人・神崎誠(仮名、以下人名同)は従業員である人気キャバ嬢レイをバックヤードに呼びつけて話し込んでいた。

「田島さんのこと? あの人、オーナー会社の御曹司みたいだからコレはたんまりもっているかも(笑)」

 レイは親指と人差し指で円を描くと、ニヤリと笑った。

「堅気か、それはいい。レイ、あいつを誘ってみろ」

 神崎はそう小声でレイの耳元で囁いた。

 賑やかな店内をレイは思案しながら歩く。彼女はVIP室に戻ると田島壮太の横に座り身体を密着させた。

 田島は建設会社の二代目社長だった。一晩で数百万円を使うこともザラの上客である。Xでのお気に入りがレイだった。

「田島社長っ、この後はどうするの?」

 甘えたような声でレイが耳元で囁く。

「アフターに行きたいのか。よし朝まで飲むか!」

 田島が上気した声でレイの肩を抱き寄せる。

「じつはお店が終わったら支配人と約束があるの。お友達がやっているバカラ屋さんがあるの。せっかくだから田島さんも来ない? 私、田島さんと一緒に行きたいなー」

 レイは酔ったふりをしながら田島の身体に更に身を預ける。

「バカラ?」

 会社社長は素っ頓狂な声をあげた――。