そんな彼女が連ドラで再び注目されたのは、井上真央主演のNHK連続テレビ小説『おひさま』(2011年)で若くして亡くなった母親役。出番はわずかながら、その美しく強い母親像は強烈なインパクトだった。ヒロインにこれからの女性の生き方を説き、導いた人でもあった。
原田が演じた母親、悪女、美しすぎる死者…
NHKドラマ『紙の月』(2014年)では一転、銀行員として勤めながら顧客を騙して横領した金で男に貢ぎ、さらに借金、不倫をした挙句、国外逃亡する悪女を演じたが、その圧倒的な透明感と聡明な雰囲気には、視聴者も丸ごと飲み込まれそうな凄みがあった。
さらに再ブレイクのきっかけとなったのが、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』(2018年)で演じた律(佐藤健)の母親・和子さんだろう。ピアノを弾いたりお菓子を焼いたりする上品な女性で、息子が『和子さん』と名前呼びするのがしっくりくる、少女のまま大人になったような女性だった。しかし出産直前にミステリー小説の怖いシーンを微笑みながら読んでいるエキセントリックさや、唐突にモノマネをかましてみせるお茶目さもあったりと、つかみどころのない魅力的な女性だった。
和子さんのイメージをそのまま引き継いだような雰囲気があったのが、『あなたの番です』(日本テレビ系/2019年)の田中圭演じる主人公の魅力あふれる姉さん女房・菜奈さんだ。しかし前半戦終了時に突然殺されてしまい、穏やかな笑みを浮かべた美しい死に顔にハエが止まるえげつなさで、視聴者たちを恐怖と混乱に陥れた。
思えば少女の頃から原田知世にはナチュラルな透明感と、妖精のような軽やかさ、どこか現世に存在しないような儚さがあった。そうした不変の土台の上に、スウェディッシュ・ポップなどの世界観が背景として加わり、年齢や経験も重ねて、より一層、異国のような、生と死の狭間のような不思議な存在感を醸し出すようになった気がする。だからこそ『おひさま』『半分、青い。』『あな番』などのように、亡くなる役を演じることも多いのだろう。