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「ホルモン焼きデート報道もファンタジーみたい」原田知世が50歳を過ぎても“少女”でいられるワケ 《奇跡の女優》を生んだ戦略

2021/11/19

 益田ミリの同名人気漫画を原作とした連続ドラマ『スナック キズツキ』(テレビ東京)。舞台の中心になっているのは、社会に疲れ、傷ついた客だけがたどり着くという不思議な店「スナック キズツキ」。スナックなのに、ママが飲めないからという理由で、アルコールは一切置いていない。

 この作品に登場するのは、過去の大きなトラウマや、劇的な出来事による深い心の傷ではなく、日常に溢れる些細だけれど無視できない小さな悪意や、鈍感さに傷ついた人々。そして、そんな傷ついた人もまた、無意識のうちに誰かを傷つけているという「キズツケ→キズツキ」の連鎖が、毎話リレー形式で描かれている。

 ママであるトウコは訪れた客のキズツキを表情や佇まいから察知し、マイクを渡してカラオケを勧めたり、ロールピアノを渡して連弾に誘ったり、エアギターをやらせたり、白紙の本を渡して朗読するように促したりする。客は当然、戸惑い、断るのだが、強引にのせられ、気づくと自身のキズツキの日常を歌ったり奏でたり、朗読したりしてしまうのだ。そこで心に積もった澱をいったん排出し、リセットして歩き出す。

『スナック キヅツキ』でママを演じる原田(原田のインスタグラムより)

 この不思議なママ、トウコを魅力的に演じているのが原田知世(53)だ。「癒しドラマ」の範疇に収まらない不思議な可笑しさ、軽やかさ、切なさを担っている。

抜群の透明感と“棒読み”で鮮烈なスクリーンデビュー

 思えば、原田知世は本当に不思議な女優だ。

 1982年の「角川映画大型新人募集」で特別賞を受賞して芸能界入りするや、すぐさまドラマ『セーラー服と機関銃』『ねらわれた学園』(共にフジテレビ系/1982年)に主演。そして、翌年のスクリーンデビュー作『時をかける少女』(1983年)で、世間は原田の不思議さに釘付けになった。

 同作は筒井康隆のジュブナイルSF小説原作の映画で、大林宣彦監督の「尾道三部作」の一つ。原田が演じた高校生・芳山和子は、高校の実験室で白煙と共に漂うラベンダーの香りを嗅いだ瞬間、意識を失い、それ以来時間を移動してしまうような不思議な現象に悩まされるようになる。

 このSFならではの不思議な世界観を、より一層不思議な雰囲気に仕立てていたのが、静謐なピアノの音や薄暗い画面、そして何より、ヒロインの原田だった。クリクリとした小さな愛らしい目鼻立ちと素朴なショートヘア、抜群の透明感と、“棒読み”。

DVD「時をかける少女」

 その印象は鮮烈で、当時10歳だった筆者は「これはラベンダーの香りだわ」と言いながら教室の床に倒れるごっこ遊びに興じたものだ。おそらくそういった小中学生は当時、日本中に溢れていたことだろう。未来から来たのは男の子のほうなのに、途中までヒロインが未来人ではないかと思ったくらいの浮遊感があった。