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 実はこの“棒読み”は大林監督の演出だったらしい。映画評論家の町山智浩が大林監督の追悼としてTBSラジオ『たまむすび』(2020年4月14日放送)に出演した際、次のように語っていた。

「『時をかける少女』のときに『セリフがみんな棒読みだ』っていう風に批判されたんですね。『わざとやってます』っていう風に言っていました」

「『映画というのは、芝居じゃないんですよ』って言うんですよ、彼(大林監督)は。『映画っていうのはおもちゃなんです』って言うんです。『現実の通りじゃなくていいんです。バカバカしくていいんです』って」

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トレンディ女優から路線変更 選んだのは…

 ここから薬師丸ひろ子、渡辺典子と共に「角川三人娘」として人気を得た原田は、『早春物語』特別出演、『恋物語』主演(ともにTBS系/1986年)と、ドラマに立て続けに出演。しかし、1年後には角川春樹事務所から独立し、ホイチョイ・プロダクション原作の『私をスキーに連れてって』(1987年)、『彼女が水着にきがえたら』(1989年)に出演するなど、アイドル女優からトレンディ女優路線に移行した。

 かと思えば、1990年代に入ると音楽活動を本格化。特にスウェディッシュ・ポップのトーレ・ヨハンソンのプロデュースによるアルバム『I could be free』(1997年)が高い評価を得てからというもの、“北欧色”を強めていく。

 そして北欧と原田は、実に好相性だった。

2020年にリリースしたカバーアルバム『恋愛小説3~You & Me 』

 張り上げることなく、口を大きく開けず、ハミングするように歌う軽やかな歌声と、微妙に揺れる音、それが原田のたゆたうような浮遊感と透明感にピタリとハマリ、ふわふわ心地良くアンニュイな音楽を作り出した。それは現在まで続く、生身感がなく、妖精のようでどこか不思議な“原田知世像”が完成した瞬間だったかもしれない。自然の中でいつでもカフェオレを飲んでいる「ブレンディ」のCMのイメージそのものでもある。