「コングラチュレーションズ!」

 5月14日金曜日の夜、米石油精製販売会社マラソン・ペトロリアム社からコンビニエンスストア、スピードウェイを買収する手続きが完了したと報告がありました。

 私は米セブン-イレブン・インク社長のジョー・デピントに祝福メールを送って2人で喜びを分かち合い、その夜は、長きにわたった検討と交渉がようやく終わった安堵感からぐっすり眠ることができたのです。ところが――。

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米独禁当局が突然の「違法」声明

〈セブンの米コンビニ買収「違法」米独禁当局2委員が声明〉(読売新聞5月15日夕刊)

 翌朝、米国ではまったく予想外の事が起きていました。突然、連邦取引委員会(FTC)の委員2人が、一定の地域において競争上の懸念があると声明を発したのです。

セブン&アイ・ホールディングス 井阪隆一社長

 買収の検討を始めたのは、コロナ禍前の2019年10月のこと。マラソン社がコンビニ事業を売却する方針であることがわかり、ジョーから「買収を検討したい」と相談を受けたのが始まりでした。それからは平坦な道ではありませんでしたが、ようやくゴールにたどりついたと思った矢先の出来事ですから、さすがに驚きました。

 私たちは2005年に米セブン-イレブン・インクを完全子会社化した以降も、M&Aを通じて北米の店舗拡大を続けています。2018年には、スノコLP社のコンビニ約1100店舗を取得(買収金額約3650億円)し、今回のスピードウェイもあわせて北米のコンビニ事業は約1万3400店(日本国内は2万1200店)、営業利益はセブン&アイ・グループ全体の約30%を占めます。21年8月中間期の営業収益は昨年同期比170%。押しも押されもしないグループ全体の成長の源となっているのです。

《セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長(64)は、セブン-イレブン、イトーヨーカドー、そごう、西武などを展開する巨大流通グループのトップだ。1980年にセブン-イレブン・ジャパン入社以来コンビニ事業一筋で2009年に同社社長に就任。2016年、「コンビニエンスストアの父」と言われる鈴木敏文氏の会長退任後、同グループ社長に昇格した。》

 日本国内は人口減少でコンビニ市場は成熟し、この先の競争環境は厳しくなっています。スーパーや百貨店も、コロナ前の売上まで回復するにはまだ時間がかかるでしょう。米国事業に2兆円以上もの巨費を投じたのは、人口増と継続的な経済成長が見込める国には、積極的に進出しようと考えているからです。