1ページ目から読む
2/4ページ目

日本企業による買収としては過去最大規模

 10月9日には、インド1号店をオープンしました。米マクドナルドが100カ国以上に出店しているのに対し、私たちはまだ18の国と地域にしか進出していない。今後も世界展開を進め、日本発のグローバル・リテイラー(小売業者)を目指しています。

 北米は、先進国の中ではめずらしく経済成長が人口増によってしっかりと支えられています。3年前のスノコ買収も大きな挑戦でしたが、スピードウェイは全米36州で業界3位の3800店を展開し、買収に成功すれば、米セブン-イレブンの店舗数は1万3000店にまで増え、プレゼンスをさらに高める千載一遇のチャンスでした。ただし、買収金額は巨額。回収には相当の期間がかかるという計算結果が出ました。日本企業による買収として過去三本の指に入る大勝負ですから、それ相応の準備と覚悟が必要でした。

 交渉を始めて5カ月後の2020年3月には、金額面で折り合いがつかず、1度断念しました。それでも米セブン-イレブン社長のジョーはあきらめなかった。彼はダグラス・マッカーサーと同じウェストポイント陸軍士官学校出身で、どんなことも粘り強くやり遂げます。こちらのどんな厳しい要求にも応え、条件面での調整を続けたのです。

ADVERTISEMENT

米セブン-イレブンの店舗

 そして昨夏、再び買収のチャンスがめぐってきた。取締役会では、リスクとチャンスの両面から検討し、その場で疑問が出れば、次の会議までに答えを用意し課題を解決していく。通常、取締役会は月1回ですが、昨年7月には5回開きました。

 今回異例だったのは、新型コロナウイルスの影響で現地視察がかなわなかったことです。スノコ買収の時はバスを借り切って、40~50店の現地調査を行いました。今回はその代わりに、米セブン-イレブンが作成した店舗規模や粗利益率、車で立ち寄りやすい立地か、駐車場の広さは十分にあるかなどの店舗の詳細なレポートを参考にしました。とりわけ地形(じがた)は重要で、それなりの広さがある店舗が多かったことは決め手のひとつでした。最後には社外取締役を含む13人の役員の全員一致で買収を決めました。

 買収を発表したのが2020年8月。それから9カ月間にわたりFTC事務局とコミュニケーションを密に取っていました。事前にFTCから「一定地域の店舗密度が高く独占禁止法に触れる恐れがある」と指摘を受けていたのは事実です。過去の買収での経験則からこの指摘は想定内でした。交渉の結果、293店舗を売却することで合意し、2021年5月に事務局とは取引実行の内諾を得ていました。

 ところが、冒頭のようにFTCの一部の委員から買収に待ったがかかったのです。これはまったくの想定外でした。しかしFTC事務局との間で適正な手続きを踏んできたことに自信はありましたので、そこは慌てずに委員の方に改めて丁寧な説明を行いました。そして約1カ月後の6月、ようやく正式に買収の同意命令を得ることができたのです。