どこにでもいる普通の子供
久保木被告は1987年1月7日生まれ。幼少期を茨城県で過ごし、県内の公立小学校に通っていた。小学校6年生で神奈川県伊勢原市に転居。中学は公立中学に、高校は県立高校へと進学した。
幼い頃は、集団で遊ぶのが苦手なものの、近所の子供たちとは楽しく遊んでいたようでした。
小学校の入学後も特筆すべきことはありません。要領はよくなく、友人は少ないものの、どこにでもいる普通の子供といった印象です。学校の通知表には、次のような担任のコメントが並んでいます。
〈穏やかで自分の考えを押し通そうとせず、友達と仲良く助け合って生活しています〉(小1)
〈人の気持ちを思いやる心が育ってきており道徳の発表などは、随所で優しさが光っています〉(小2)
〈物静かですが、しっかりと話を聞き、しっかりと考えて的確な行動をとることができます。また自分の意見をはっきりと主張できるのも立派です〉(小4)
中学入学後は、学校で親しい友人が4人できたようです。声優が好きで、声優のライブに友達と行ったこともあったようでした。
〈友人関係は安定し、日常の諸活動や、体育祭等にも、みんなと協力して、しっかり取り組むことができました〉(中1)
幼少期から高校まで、対人面での重大な障害は見られなかった
ところが高校に入学後、クラスに馴染めず、孤立してしまった。1人で過ごすことが多くなり、アガサ・クリスティーなどの推理小説を好んで読んでいたそうです。
一方、学外ではファストフード店、スーパーで各1年ずつアルバイトをしており、特にスーパーでは経営者から可愛がられていた一面もあった。場所によっては、きちんと適応できていたと言えます。
検察による鑑定では久保木被告はASDとされていますが、幼少期から高校までの記録を見ても、そのような痕跡は発見できませんでした。
ASDであれば通常、行動や興味の強いこだわり、コミュニケーション障害など、なんらかの特徴が子供の頃から見られます。本人や家族の話を聞く限り、対人面での重大な障害は見られなかった。学校の成績も特別良いわけではありませんが、中位レベルを保っていました。