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障害者病棟での仕事内容が合わず、精神が不安定に

「大人になってからは、看護職にこだわりがあった」と検察側の鑑定は指摘していましたが、通常のASDにみられるこだわりとは全くレベルが違います。例えば、自閉症を扱った映画『レインマン』では、主人公が毎日の食事を必ず決まった順序で食べるシーンがある。行動パターンに異様なこだわりがあるのです。

 そもそもASDは、誤診が非常に多い。検察側の鑑定は、ほとんど素人的なものに思えました。

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 高校卒業後、看護専門学校に進学。2007年4月に正看護師免許を取得し、看護師となった。

 専門学校卒業後は、横浜市内の病院へ就職。3年目で配属された障害者病棟での仕事内容が合わず、精神が不安定に。2014年4月8日、精神科クリニックを受診し、抑うつ状態と診断を受ける。その頃は、休職や、系列の老人ホームや診療所への異動が続いている。

写真はイメージ ©iStock.com

看護師免許を取得したのは、母親の希望

 高校卒業後、看護師免許を取得したのは、「手に職をつけてほしい」という母親の希望が大きかったようでした。専門学校へは、当初は自宅から通い、2年次からは寮で生活をしていました。

 注目すべきは、学校での成績です。全体としては中位ですが、科目によって偏りがあった。学科の成績を見ると、30科目中C判定が3教科で、他はA判定かB判定(判定はAが最高、Cが最低)。それが実習になると、14科目中9科目がC判定となっている。被告は「あらかじめ決められた手順をこなすことはできるが、臨機応変な対応を求められると混乱する」とも話していました。緊急事態が生じやすい看護現場には、明らかに向いていないのです。

 最初の病院に就職後、配属された回復期リハビリテーション病棟では、ごく普通の看護師として働けていた。作業スピードは遅いですが、業務自体は難なくこなせていた。人間関係については、同僚とカラオケに行ったり、USJに遊びに行くこともありましたが、友人と言えるほど親しくはならなかったそうです。