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――一昔前には「網棚のジャンプ、ラーメン屋のマガジン、漫研のサンデー」と言われました。じっくり腰を据えて読む「少年サンデー」の雰囲気が戻ってきたように感じます。

市原 とにかく良質な漫画をつくらないといけない。ただ今のサンデーを例えるなら、とんでもない大病をして命の危機に瀕し、二度と走れないだろうと宣告されたランナーが、緊急手術をしてどうにか再びランニングできそうな状態に戻ったにすぎません。オリンピックに出てライバルとしのぎを削って金メダルを争うレベルに到達するには全力で頑張ってもあと15年はかかります。編集部には、油断したらまたすぐ廃刊の危機だよ、と言ってます。自分たちのやるべき仕事の優先順位を間違えてはいけない。当初は10年かかると思われた改革の第1章は終わりましたけど、決して慢心してはいけない。

 

――今の立場と、今後の関わり方は?

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市原 肩書きとしては「プロデューサー」です。要するに次長ですね。「少年サンデー」「ゲッサン」「月刊サンデーGX」「サンデーうぇぶり」を統括する立場です。この「サンデーグループ」のブランド力を高めていくのが仕事だと思います。SSC(少年サンデーコミックス)を充実させるということが重要です。

――最後に、現在の「少年サンデー」編集部に一言。

市原 俺のような悲惨な目にあう編集長は二度と出すなよ(笑)。

(撮影:石川啓次/文藝春秋)

市原武法(いちはら・たけのり)

 

 1974年東京都渋谷区生まれ足立区育ち。外食産業への就職を希望した時期を経て、97年小学館入社。「週刊少年サンデー」編集部に配属され、あだち充、西森博之、満田拓也、田辺イエロウ、モリタイシなどを担当。月刊誌「ゲッサン」創刊を企画し、2009年の創刊時は編集長代理、翌10年編集長に就任。2015年7月に「週刊少年サンデー」編集長に就任。2021年10月13日付で編集長を退任し、現・小学館第二コミック局プロデューサー。歴史上で一番尊敬する人物は、越の軍師・范蠡(はんれい)。人格形成に影響を与えたのは、「『タッチ』の上杉達也が6。『燃えよ剣』の土方歳三が3。『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドが1」。オリックスファン。『水曜どうでしょう』藩士。『ゴリパラ見聞録』ハードキッズ。