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――「少年サンデー」の連載陣は、かなり大幅に入れ替わりましたね。

市原 最初の2年間で6割ぐらいが連載を終了しました。のんきな関係者からよく「ジャンルが偏っている」とか「もっとこういう漫画を増やしたら?」なんて言われましたけど、勘違いしてほしくないのは、僕は侍ジャパンとかオールスターの監督ではないんです。

 よりどりみどりの作家陣のなかから僕の好みでピックアップしてラインナップを決めていたわけではなく、少ない現有戦力でどうにかして死にものぐるいのゲリラ戦をやっていくしかなかった。僕自らも走り回って何とか毎年新連載攻勢の本数を揃えていったんですから。それを5年間。最後の1年間はほとんどチーフたちに任せましたけど、本当に疲れました(笑)。全く贅沢を言ってられる状況ではなかったんです。

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お金をかけるところを間違えてはいけない

――それではみっつ目のポイントは?

市原 「少年サンデー」の経営状況ですね。これはもう、論外中の論外。

――あら。

市原 就任当時で前代未聞の大赤字になる見通しでしたが、結局、最初の半年で大暴れして全部食い止めました。そのかわり、その分の経営資源は新人作家の育成に振り向けました。新人作家の育成資金は、僕が「少年サンデー」に戻ってきた当初に比べると、現在は17倍くらいになってます。それでもライバルに比べたらまだ負けてると思いますよ。とにかく新人作家の育成にはお金がかかります。だけど、そこにいくらかけられるかが勝負なので、お金をかけるところを間違えてはいけない。

 

――市原さんの「少年サンデー」編集長の在任期間は歴代2位(2015年35号~2021年45号)でした。その間には「サンデーうぇぶり」(漫画配信アプリ/2016年に配信開始)もはじまりました。

市原 webだと連載ペースは月1でも年1でもいいので、作家さんのペースに合わせた連載の仕方ができます。また、新人作家の読切を載せることもできます。そのへんがデジタルの強みですよね。ただ、僕は方針を出しただけで、実際の立ち上げ&運営は大嶋一範(現編集長)が全部やってくれました。僕は人材育成と漫画に関わる意思決定に専念していました。

――市原さんの「サンデー改革」によって、編集部はどのように変化しましたか?

市原 最初の3年間は、まさに宣言文で出したとおり、「漫画勉強会」で編集者を鍛えつつ、僕が新人作家の作品すべてに目を通していました。ただ、それだと僕の体が保たない(笑)。はじめに目をつけた3人の編集者が比較的早く育ってくれたので、4年目には彼らをチーフに任命し、編集部員を3班に分け、チーフを中心にするチームで漫画をつくるという体制をつくりました。