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2021/11/30

中間色の表情『葬送のフリーレン』のフェルン

市原 『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人、作画:アベツカサ)は、ここの表情(※注:単行本1巻P.60のフェルンの表情)を見てほしい。僕はこれを見たときに鳥肌が立ちました。人間の感情は喜怒哀楽ありますけど、いずれか100%の状態って、そんなにないと思うんですよ。つねに何かと何かが混じり合った状態。100のうち悲しみ35、焦り15、不安20……とか、いろいろな感情がつねに混じり合っている。その中間色の感情を描ける人というのは、やっぱりすごいです。

市原さんが「鳥肌が立った」と語る、フェルンの中間色の表情 ©山田鐘人・アベツカサ/小学館

――そういう表情があると「この人いま何を考えてるんだろう?」と読者の解釈に委ねられる部分が生まれますね。

市原 そう。あだち充なんて、まさにその究極ですよ。

――『葬送のフリーレン』は2021年の漫画大賞を受賞しました。

市原 本当によかったですね。あの作品は、チーフ制を導入した新体制の2年目に出てきた作品で、チーフのひとりが立ち上げた連載です。連載獲得まで5年ぐらいかかっているんですけど、早い出世ですよね。新生サンデーの、いわば新人作家第1期生じゃないでしょうか。

――新しいチーフ制から新人作家のヒット作が出るというのは、意味合いが大きい?

市原 とても重要です。はじめて『葬送のフリーレン』のネームを読んだときに、僕はひっくり返りましたから。僕が介入しなくてもこういう企画が出てくる現場になったんだな、と。その喜びしかなかったですね。1コマたりとも僕は手を入れていない。「早く連載にしろ」「週刊連載以外はイヤだ」としか言ってない。「少年サンデー」の生え抜きの新人作家で1作目から映像化もされていないのにこれほどのメガヒットを出したのは、おそらく30年ぶり。『今日から俺は!!』(西森博之)以来の快挙ですよ。

――現在の「少年サンデー」を象徴するような作品ですか?

市原 そう言えると思います。新しい「チームサンデー」に持ち込みに来ていただいた作家さんと、自立した編集者が二人三脚でともに成長し、いい漫画をつくった。もう僕が苦労しなくても大丈夫そうだな、と。ホッとしたのが一番です(笑)。