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 そこで簡易精神鑑定を受け、湯浅さんは初めて自分の万引きが依存症なのだと知った。

「『窃盗も覚醒剤も向精神薬も整形や入れ墨が止まらないのも、依存症という病気だよ』と言われたとき、初めて『自分は病気なんだ』『病気なんだから直るのかもしれない』って安心したような気持ちになったんです。もしかしたら自分はダメ人間じゃないのかもしれない、って。3度目は裁判の結果、執行猶予2年のついた懲役1年半でした」

 

 しかし病気だと分かったところで、依存症の類は一朝一夕には改善しない。湯浅さんは治療を望んでいたが、どこへ相談すればいいかわからず、執行猶予期間中にまたしても万引きをしてしまった。

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「私はこれまでドクターショッピングで向精神薬や睡眠薬を乱用していたので、『病院=薬』のイメージから夫にも病院へ行かせてもらえなかったんです。執行猶予2年の判決が出てからもほぼ毎日万引きをしていて、2週間くらいでまた捕まりました。その時に盗んだのは洋服です。前回の分も合わせて、懲役2年半の実刑判決になりました」

懲役2年半の実刑で見えた「一筋の光」

 ついに受刑者となってしまった湯浅さんは、立川拘置所へ収監された。「落ちるところまで落ちた」と絶望したという。しかしこの懲役によって、湯浅さんの人生に一筋の光が差す。

31歳頃の湯浅さん

「薬物を乱用していたときは、『こうしたらこうなる』という普通の思考ができないんです。車を運転していて横断歩道を人が渡っていたら、停止しないとひいちゃうと分かりますよね。でも薬の影響ですぐ先の単純なことすらわからない。それが、薬が抜けて分かるようになったんです。後は、夜に眠れるようになったのも精神状態にはとてもよかったですね。自分では分かりませんでしたが、オーバードーズ特有の舌っ足らずな喋り方も直ったようです。20年ぶりに、そんな普通の状態を取り戻すことができたんです」

 湯浅さんは拘置所で強制的に薬物や万引きができる環境から引き離され、徐々に冷静さを取り戻していった。そこで耳に入ってきたのが、拘置所での「講話」だ。

「拘置所では、小松政夫さんやビートきよしさんの講話が流されていました。でもここまで落ちているのに成功者の話なんか聞いても、まったく染みてこなかった。『ここから這い上がる方法を教えてくれ』って感じになっちゃうんです。