政治家は落選を考えていたら何もできない
――そこを避けるリーダーも多いです。
村井 いや、もう知事選に落ちてもいいと思っていたから。政治家というのは落選を考えていたら何もできないので。元々私は宮城に地縁もない。大阪の人間で、宮城との接点は自衛隊時代に仙台の駐屯地に配属されたというだけです。でもだから実行する。二世議員じゃなかなかできないと思います。怖いから。
――正しいと思うからやるんですよね。
村井 そう、信念。自分が正しいと思ったことをやろうと。反対派からしたらどうしようもない男に見えるでしょうね(笑)。ただ、有観客でやろうと決断した後は、職員たちも感染対策を完璧にやろうと、テロ対策も含めて徹底的に準備してくれました。
日本社会の縮図となった「東京2020」
――リーダーの顔がきちんと見えて、その人が最終的な意思決定をし、結果の責任をとるというのは今の日本ではほとんど見られない、まさにそういった意味で東京2020は日本の縮図のように見えます。
村井 見えますね。今の日本を表していたと思います。私は陸上自衛官のとき、ヘリコプターのパイロットだったんです。ヘリコプターを操縦するときは、できるだけ遠方目標をとる。
目の前のことではなく、この先どう進むのかをしっかり決めて飛んでいかなければいけません。政治も同じですよね。遠方目標がないから目の前のA地点やB地点ばかりをぐるぐる回ってしまう。やはりこの先日本がどうなるのかを見定めて、今なにをやるかを決めなければと思っています。
――アスリートの活躍は素晴らしかったけれど、一方で多くの人が意義を見いだせなかった、東京2020はその典型でしたね。
村井 そうですね。日本社会を表していましたね。このままだとまずいと思っても、意見を言うと怒られるから控えてしまう。五輪にぶら下がってお金を稼ごうとする人が集まってきて、さらに悪い方向に進む。でも上は偉い人ばかりだから、みんな何も言えない。まさに日本の社会の縮図が、今回の東京2020だったと思います。