(2)めんどくさい渋皮とりがラクに。ボロッと皮がむける栗
新品種を開発するには、現在では、遺伝子レベルの研究が中心になっている。
農研機構果樹研究所(現・農研機構果樹茶業研究部門)が、ニホングリの品種改良に60年もかけて2006年に開発したのが、ポロッとむきやすい、その名も「ぽろたん」である。
ニホングリは、日本と朝鮮半島南部が原産で、美味しさで知られる。唯一の欠点は渋皮がむきにくいことだった。パリの名物の焼き栗や中国の天津甘栗は、外側の鬼皮に割れ目を入れると、ポロッとむけて食べやすい。マロングラッセのように、まるごとスイーツや料理に使いやすい。
一方、ニホングリの渋皮がむきにくいのは、カスタヘジョンというポリフェノールの一種が、果肉と渋皮の間に多く蓄積するのが原因だった。その性質は遺伝子に由来する。
ニホングリには、渋皮がむきにくい「優性遺伝子(P)」と、渋皮がむきやすい「劣性遺伝子(p)」がある。ニホングリの品種のうち「丹沢」と「550-40」はともに「Pp」の遺伝子を持っている。この2品種をかけ合わせて誕生した4種類の遺伝子型(「PP」「Pp」「pP」「pp」)のうち、「pp」だけは渋皮がむきやすい。こうして、「ぽろたん」(遺伝子型は「pp」)が誕生したのである。
熊本県は、「ぽろたん」が品種登録された2007年に県下一斉導入を決め、2010年には販売を開始。同種の生産量は熊本県が日本一で、中心的な産地は山鹿市(やまがし)である。
さらに農研機構は、2017年、渋皮がむきやすいクリの新品種「ぽろすけ」を育成した。「ぽろたん」より収穫時期が早いので、渋皮のむきやすいニホングリの収穫期間が長くなり、まるごと使える高級グリの収穫増が期待できる。
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JA熊本果実連が勧める「ぽろたん」を使うレシピに「簡単くりごはん」があるので、作り方を紹介。
・「ぽろたん」を包丁で半分にきる
・2~3分茹でて渋皮をむく(手でむける!)
・お米に入れて炊く
これまで何時間も水につけ、苦労してとっていた渋皮が簡単にむける。栗を使った料理が非常にラクになるのは画期的だ。家庭でも和栗の利用がもっと手軽になるかもしれない。
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