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そこまでするんだ日本人。びっくりする食材を3つ選びました

『日本のすごい食材』を書いた河﨑貴一がびっくりしたこと

2017/11/29

(2)めんどくさい渋皮とりがラクに。ボロッと皮がむける栗

左が「ぽろたん」。渋皮がポロッとむける。右の「筑波」は渋皮が果肉に接着している。©農研機構果樹研究所

 新品種を開発するには、現在では、遺伝子レベルの研究が中心になっている。

 農研機構果樹研究所(現・農研機構果樹茶業研究部門)が、ニホングリの品種改良に60年もかけて2006年に開発したのが、ポロッとむきやすい、その名も「ぽろたん」である。

 ニホングリは、日本と朝鮮半島南部が原産で、美味しさで知られる。唯一の欠点は渋皮がむきにくいことだった。パリの名物の焼き栗や中国の天津甘栗は、外側の鬼皮に割れ目を入れると、ポロッとむけて食べやすい。マロングラッセのように、まるごとスイーツや料理に使いやすい。

 一方、ニホングリの渋皮がむきにくいのは、カスタヘジョンというポリフェノールの一種が、果肉と渋皮の間に多く蓄積するのが原因だった。その性質は遺伝子に由来する。

「ぽろたん」の系統図。

 ニホングリには、渋皮がむきにくい「優性遺伝子(P)」と、渋皮がむきやすい「劣性遺伝子(p)」がある。ニホングリの品種のうち「丹沢」と「550-40」はともに「Pp」の遺伝子を持っている。この2品種をかけ合わせて誕生した4種類の遺伝子型(「PP」「Pp」「pP」「pp」)のうち、「pp」だけは渋皮がむきやすい。こうして、「ぽろたん」(遺伝子型は「pp」)が誕生したのである。

熊本県山鹿市内で栽培されている「ぽろたん」。皮がむきやすくなるには60年もかかった。©河﨑貴一

 熊本県は、「ぽろたん」が品種登録された2007年に県下一斉導入を決め、2010年には販売を開始。同種の生産量は熊本県が日本一で、中心的な産地は山鹿市(やまがし)である。

 さらに農研機構は、2017年、渋皮がむきやすいクリの新品種「ぽろすけ」を育成した。「ぽろたん」より収穫時期が早いので、渋皮のむきやすいニホングリの収穫期間が長くなり、まるごと使える高級グリの収穫増が期待できる。

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 JA熊本果実連が勧める「ぽろたん」を使うレシピに「簡単くりごはん」があるので、作り方を紹介。

・「ぽろたん」を包丁で半分にきる

・2~3分茹でて渋皮をむく(手でむける!)

・お米に入れて炊く

 これまで何時間も水につけ、苦労してとっていた渋皮が簡単にむける。栗を使った料理が非常にラクになるのは画期的だ。家庭でも和栗の利用がもっと手軽になるかもしれない。

食べる前にむくので力尽きる和栗。ぽろたんなら下準備なしで料理でき、天津甘栗のようにすぐむけて食べられる。©河﨑貴一

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ぽろたんを生んだ山鹿市情報おまけ。周辺は古代からの要衝で、白村江の戦い(663年)後、唐・新羅連合軍の日本侵攻に備えて鞠智(きくち)城が築かれた。「熊本県立装飾古墳館分館 歴史公園鞠智城・温故創生館」にて。©河﨑貴一