第34期竜王戦七番勝負で、挑戦者の藤井聡太三冠が豊島将之竜王を4勝0敗で破り、竜王を獲得。史上最年少での四冠王となった。同時に藤井は、現役棋士の中で序列1位となった。
竜王戦が決着する直前の序列トップ5は
1位、渡辺明名人(棋王・王将)
2位、豊島将之竜王
3位、藤井聡太三冠(王位・叡王・棋聖)
4位、永瀬拓矢王座
5位、羽生善治九段
であったが、藤井が竜王を奪取した結果、以下のようになった。
1位、藤井聡太竜王(王位・叡王・棋聖)
2位、渡辺明名人(棋王・王将)
3位、永瀬拓矢王座
4位、羽生善治九段
5位、谷川浩司九段
ファンが気になる「上座にどちらがつくか」問題
棋士の序列で、まずファンが気になるのは対局室の上座にどちらがつくかということだろうか。
谷川九段が名人を奪取した後にあった加藤一二三九段との対戦で、先に上座に座られ「私の座る席がない」と内心思ったエピソードは有名だし、またA級1期目の羽生(当時四冠王)が中原誠十六世名人、谷川とA級順位戦で当たった時に上座に座ったことが物議をかもしたことも知られている。いずれも現在なら、谷川・羽生が上座でまったく問題視されないはずだ。仮に来期のA級順位戦で藤井―羽生戦が実現し、藤井が上座に座ったところでいちゃもんをつける外野の人間など存在しないだろう。また逆に、丸山忠久九段が大先輩の七段を相手に敬意を表して下座で待っていたところ、その先輩に強引に上座に押しやられたという話もある。
筆者が間近で見た席次に関するエピソードを紹介すると、まず女流棋界の第一人者、清水市代女流七段へのリスペクトがゆえに生じた戸惑いが思い出される。伊藤真吾六段と梶浦宏孝七段がいずれも新四段のときに清水女流七段と公式戦で戦う機会があったが、どちらも「私が上座でいいのでしょうか」と、たまたま盤側にいた筆者に聞いてきた。規定では新四段であっても女流棋士相手には上座につくことになっているが、第一人者相手に上座についていいのかと思わせる威光が清水にはあったということだろう。伊藤―清水戦が2007年、梶浦―清水戦が2015年。梶浦の時には8年前にまったく同じことがあったなあと一人思い出した次第である。
また、羽生九段がそれまでの通算勝利記録だった大山康晴十五世名人の1433勝を更新することになった、2019年の対永瀬叡王(当時)戦では以下のような一幕もあった。
大記録がかかっているので、対局開始時からマスコミが大集合している。筆者はその一局をたまたま盤側で観戦する機会に恵まれたが、対局室に入ると永瀬が一人、下座に座って待っている。そこへ姿を現した羽生が、当然、永瀬を上座に促した。多少のやり取りがあった末に永瀬が上座に移ったが、そのタイミングで上座を写そうとしていたカメラマンが大挙して逆の位置に動いた。羽生が永瀬を上座に促すことを予測している将棋関係の記者は最初から下座を写すべく待っていた。その光景のコントラストにおかしくなったことを覚えている。