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特集観る将棋、読む将棋

3位・藤井聡太と準優勝・伊藤匠 優勝した川島滉生さんが“伝説の写真”に抱える複雑な思い

川島滉生さんインタビュー #2

2021/11/12

 藤井聡太三冠と伊藤匠四段が並んでいた「第9回小学館学年誌杯争奪全国小学生将棋大会・3年生の部」の写真。その真ん中に写っているのが、現在は早稲田大学将棋部に所属している川島滉生さんだ。

 インタビュー後編では、川島さんの将棋との関わり、大学受験と現在のこと、活躍する藤井三冠や伊藤四段への思い、あまりに有名になってしまったあの写真を見て思うことを聞いてみた。

川島滉生(かわしま・こうせい)さん。2002年生まれ。神奈川県横浜市出身。私立攻玉社中学高校卒業。2018年、高1で全国高等学校将棋選手権男子個人の部優勝。現在は早稲田大学法学部1年生。将棋部に所属 ©石川啓次/文藝春秋

都内の私立中高一貫男子校に入学

「小学館の大会でたっくんに負けて3位だった藤井君だ。凄い人だったんだ。たっくんが強いって言ってはいたけれど、まさかここまでだなんて」

 2016年9月、史上最年少の14歳2カ月で藤井聡太四段昇段のニュースを聞いて川島さんは、あの大会のことを思い出した。

 プロにはならないという選択をした川島さんは、中学受験をして都内の私立中高一貫男子校・攻玉社中学の2年生になっていた。将棋部のある学校を選び、将棋を続けていたけれど、たっくんとライバル争いをしていた頃ほど熱心にはなれない。奨励会の成績表も、伊藤奨励会員だけチェックしていて、関西奨励会や三段リーグは見ていなかった。だから藤井聡太君が、猛スピードで奨励会を駆け上がっているのは知らなかったのだ。

 あの写真を伊藤匠四段の父・雅浩さんが初めてツイッターにアップしたのは、2017年の6月、中学3年の藤井四段が連勝記録を28まで伸ばしたタイミングだ。

山形県で行われる全国大会でベスト8に

 写真の藤井四段は、目をつぶっている。真ん中に写っている自分を見て川島さんは「凄い人の上にいっちゃったんだな」と思った。そのときは、写真がそれほどバズることはなかった。まだ伊藤四段が奨励会員で、いまほど名前が知られていなかったからだ。

 中3の夏、川島さんは久しぶりに全国大会代表の切符を手にする。中学生の全国大会・中学選抜は、在住地ではなく在校地のある都道府県の予選大会に出る。東京には将棋部の強い国立、私立男子中学が多数あり、そこに周りの三県からも将棋の強い子が進学する。小学生以上に中学生の東京都大会は激戦で、中1、中2では代表に手が届かなかった。

2017年8月(中3)、山形県天童市で行われた中学生選抜の全国大会にて。男子の部ベスト8だった(川島滉生さん提供)

 全国大会は毎年、山形県の天童市で行われる。川島さんはベスト8。優勝したのは同学年の橋本力君(現・立命館大学1年・将棋研究会所属)だった。橋本さんは、小学校の頃からの仲良し。伊藤四段も、川島さんも、橋本さんも小学校時代「ときんの会」という将棋キッズの親たちが計画した将棋合宿に参加していた。泊まりがけで、棋力別の大会やプロ棋士を呼んでの指導対局など盛りだくさんで、3人はそこで仲良くなったのだ。しかし、橋本さんに対してあまりライバル心は持っていなかった。研修会時代のクラスも、大会の実績も川島さんが上だったからだ。