人気を集めたABEMAトーナメントは、川島さんも伊藤四段を応援しながら見た。「藤井三冠に選ばれたのは、プレッシャーがかかって大変そう。視聴数も多いし、ここで勝ち星を増やしてチームに貢献すれば、たっくんの株が上がるなと思いながら見ていました」。
プレッシャーへの強さは、勝負ごとに必要な資質で僕にはないもの
伊藤四段はABEMAトーナメントでトップ棋士にたびたび勝つなど大活躍。チーム藤井「最年少+1」は優勝を飾った。伊藤四段株が急騰したところで、今度は新人王戦の決勝に進出。1局目を勝って、2局目は伊藤四段の誕生日の翌日だった。川島さんは、その誕生日の10月10日に伊藤四段に「誕生日おめでとう。明日頑張ってください」とLINEを送った。
「たっくんは僕の誕生日は知らないと思います。たっくんの誕生日を知ったのは、森内先生と誕生日が同じだと本人が言っていたからです。小2の時だったか『近所の公園で森内先生に偶然会って握手してもらった。誕生日も同じなんだ』とか自慢してきたんですよ」
森内九段の誕生日がツイッターなどで流れるたびに、たっくんの誕生日だと思い出していた川島さんだが、今年は森内九段と同じくらい「伊藤匠四段、お誕生日おめでとうございます」の書き込みをネットで見て、有名になったんだなと思った。
そして伊藤四段は2局目も勝って新人王になった。
「注目され、期待されるようになったタイミングで新人王を獲って、すごいなとしか言いようがありません。たっくんはファンの期待を力にできるんだなと。そういうプレッシャーへの強さは、勝負ごとに必要な資質で僕にはないものです。やっぱり、僕にはプロは向いていなかったのだと思っています」
たっくんにタイトルを獲ってほしい
早稲田大学将棋部にとって、12月に三重県四日市市で行われる団体戦・王座戦で日本一を奪還するのが最大の目標だ。川島さんは、期待を重く感じて苦しくなってしまうところはある。1人ずつの勝敗がチーム全体の勝敗につながる、これまでに経験したことのないプレッシャーは避けられない。「まだ全国大会のメンバーと決まったわけではないですけれど」と前置きしつつ、「プレッシャーになんとか折り合いをつけていきたい。友達に話して心を軽くしたりして、気負わずに将棋を楽しむ気持ちで全国大会に臨めたら」と思っている。
伊藤四段は、新人王戦優勝後のインタビューで「いずれ、藤井三冠とタイトル戦を戦いたい気持ちはある」と答えた。そんな日が早く来ればいいなと川島さんも思う。
「藤井-伊藤のタイトル戦が実現となると、またあの写真が有名になってしまいますね」と水を向けると、川島さんは「そうなんですよ。そこが問題なんです。……でも、それよりもたっくんにタイトルを獲ってほしいという気持ちのほうが強いです」。