文春オンライン

特集観る将棋、読む将棋

3位・藤井聡太と準優勝・伊藤匠 優勝した川島滉生さんが“伝説の写真”に抱える複雑な思い

3位・藤井聡太と準優勝・伊藤匠 優勝した川島滉生さんが“伝説の写真”に抱える複雑な思い

川島滉生さんインタビュー #2

2021/11/12

「ABEMAで放送中の将棋の内容を見せられ、ポイントをメモして解説してくださいと言われました。藤井三冠の将棋は難し過ぎて、特に序盤は僕には分かりません。別に森内俊之九段の収録もしていたそうで、並べられても困るんだけど、と思いました(笑)」

 翌朝の情報番組の藤井棋聖最年少初タイトルを報じるコーナーでは、同じ歳の高校日本一として藤井新棋聖の将棋を解説する制服姿の川島さんが放送された。

藤井聡太七段(当時)は渡辺明棋聖を破り、史上最年少のタイトルホルダーとなった(代表撮影)

浪人はしない、受かったところに行く受験プラン

 伊藤三段が四段に上がったのは、川島さんが高3の9月だ。頭の良いたっくんが、高校をすぐに中退していたことは知っていて、本当に将棋一本にかけているんだと思っていた。川島さんは、受験勉強の合間に三段リーグ勝敗表をチェック。たっくんは差を付けてトップを走り、今度こそ上がれそうだ。残り4局のうち2局勝てば昇段というとき、川島さんは伊藤三段にLINE。「残り4局、頑張って下さい」。「ありがとうございます。頑張ります」と返事があった。

ADVERTISEMENT

 伊藤三段が最終日を残して四段昇段を決めたというニュースを、川島さんがネットで見て、お祝いLINEを送ろうと思ったとき、先に伊藤新四段から来た。「お陰様で上がれました」。川島さんは「昇段が決まってすぐにLINEしてくれたみたいで、それは凄く嬉しかったです」と振り返る。

 そして受験。川島さんは浪人はしない、受かったところに行くと決めて受験プランを組んだ。法律に興味があったので、第1志望は東大文科1類、第2志望が早大法学部。それ以外にも将棋の知り合いがいて、将棋部が強い大学ばかりを受験した。東大は不合格。

「横川さんには、過去問で分からないところを質問したり、励ましてもらったり、お世話になっていました。期待を裏切ってしまったのは申し訳なかったです」

近年まれにみる粒ぞろいが早大将棋部に入部

 合格していた早稲田大学法学部への進学を決めた。東大将棋部側から見れば、入部を期待していた高校生が早大に行ってしまうのは仕方ないことで、たまにあることだという。早大将棋部には、川島さんの他にも高校全国大会入賞経験者や元奨励会2級など強い1年生が入部、近年まれにみる粒ぞろいで早大の黄金世代として期待されている。

「大学将棋の団体戦への熱量は聞いていた以上でした。高校将棋よりもずっと、団体戦のウエイトが大きいです。昨年の王座戦(7人制の大学対抗団体戦の全国大会)から3回連続で東大に負けているので、勝たなければと意識しています」とすっかり早大将棋部の一員となった川島さん。

 早速レギュラー入りし、今年の王座戦関東代表2校の切符を争う関東A級秋季団体戦にも4戦すべてに出場した。2位以上が確定し、東大と早大の優勝争いになった最終戦、3-3で残った最後の一戦に川島さんは勝利して、早大優勝に大きく貢献した。1年生同士の競争もあり、強い先輩たち、在学中の和田はな女流1級や、現役奨励会三段とも指せる将棋部の環境は気に入っている。