藤井竜王は名実ともに棋界のトップに立ったが、他のタイトルに挑戦した場合は当然ながら下座に座る。だがもし全冠制覇となれば、当然ながらすべての対局で上座につくわけだ。羽生九段が当時の全タイトルである七冠を制覇してから、初めて下座に回るまでに2年を要した(規定からの推測)が、藤井竜王はどうなるだろうか。
タイトル数と段位で決まる序列ルール
そもそも、将棋界における序列はどのように決まっているのかというと、基本はタイトル数と段位である。そしてタイトルの中でも竜王と名人は別格扱いだ。三冠を持っていた藤井よりも竜王一冠の豊島が上位だったのはそのためである。そして竜王と名人のどちらが上かというと、
1、同時に保持するほかのタイトル数が多いほうが上位
という決まりがある。
藤井は竜王を奪取して四冠となったため、名人を含む三冠の渡辺より上位となる。では、仮に藤井竜王(三冠)と渡辺名人(三冠)のように、どちらもタイトルの数が同じだったらどうなるか。
2、竜王と名人で棋士番号が若い(先輩)ほうが上位
この場合は同時に持つタイトルが何であろうと変わらない。上記の例だと渡辺のほうが先輩になるため、渡辺が序列1位となる。それぞれが竜王と名人の一冠ずつしか持っていない場合も同様である。もし今後、A竜王、B名人、C六冠となった場合は、Cの序列が3位で、AとBのうち、先輩が1位となる。
3、竜王と名人以外は持っているタイトルの数が多いほうが上位
4、保持タイトルが同数の場合は序列上位のタイトルを持つほうが上位
2019年3月26日に豊島王位・棋聖と渡辺棋王・王将(いずれも当時)という対局が竜王戦で実現しているが、当時の新聞観戦記には「二冠同士だが、王位を持つ豊島が上位なのは規定通りだ」と書かれている。
そしてタイトル保持者以外は、まず永世称号有資格者が上位となり、そして九段、八段、七段……となっていく。永世称号有資格者の中では、もっとも早く永世称号の資格を得た(その棋戦は問わない)棋士が上位となるため、1995年に永世棋王の資格を得た羽生が、1997年に永世名人の資格を得た谷川よりも上位にくる。そして2006年に永世棋聖の資格を得た佐藤康光九段、2007年に永世名人の資格を得た森内俊之九段が続く。