毎年自分の拳銃で自殺する人も
──現在、YURIさんはLA近郊の警察署に勤務されています。ポリスになって何が変わりましたか? ポリスの仕事についても教えてください。
YURI 価値観や世界観が180度変わりました。政治にもさらに興味を持つようになりましたし、体力面・精神面の管理はこれまで以上に気をつけるようになりました。子どもからは話し方も変わったと言われましたね。視野がすごく広くなりましたが、逆に子どもに対しては過保護で心配性にもなりました。
今私は、地区を巡回するパトロールをメインに行っています。LAでは、このパトロールの現場がいちばん危険で、死亡率が高いんです。一般の方が一生に1回でも見たらトラウマになってしまうような悲惨な現場に出くわすこともありますし、目の前で同僚が殺されることもあります。子を持つ親としては、子どもの誘拐や殺人などは本当に心が痛みますし、助けられなかった人のことを考えると夜も眠れなくなります。
犯罪者と対峙する緊張感や恐怖感と同じくらい、周囲の野次馬からの視線も大きなプレッシャーになります。いまはすぐスマホで動画撮影されて「またポリスが虐待してる」とSNSで拡散されるので、メンタルが弱いとすぐにやられます。
アメリカの警察官は自分の拳銃で自殺をしてしまう方が毎年いますね。そして常に、PTSDと闘っている人も多くいます。常に精神面の管理をすることが非常に大切になります。
ならなきゃよかったなんて、一度も思ったことはない
──精神面の管理とは具体的にどんなことをされるのですか?
YURI 私の場合は、大好きな海に行ったり、友達と飲みに行ったり、カラオケに行ったりしてストレスがたまらないようにしています。一見どうでもいいような時間が私にとってはとても大事で、心のバランスを取るのに役立っています。
──そこまでして、ポリスを続ける理由はどこにあるのでしょうか。ポリスにならなければよかったと後悔したことはないのでしょうか。
YURI 訓練中もポリスになってからも、ポリスにならなきゃよかったなんて、一度も思ったことはないです。ゼロです。
アカデミーの卒業時に、インストラクターから「卒業生18人のうち、3人はクビになる。残りの15人の半分は退職する前に死ぬ。その葬式におまえたちは行くことになる」と言われ、葬式用にと正装した写真撮影をしてもらいました。
なので、私たちにとっては、同僚が殉職するのも、自分が犯人に撃たれて怪我をするのもすべて想定内なんです。そういう覚悟を持って、私はポリスをやっています。
YURIさんのInstagram: @1114lajpn
YouTube: 「警察官ゆりのアメリカ生活」