犯罪発生件数が多いロサンゼルス(LA)で警察官(ポリス)として働く日本人女性・YURI(永田有理)さん。ブロードウェイで活躍するダンサーになりたいと思っていた彼女が、なぜLAでポリスになったのか。日本人のシングルマザーが、厳しい条件と過酷な訓練を経て、34歳でLAポリスになるまでの道のりを語った。(全2回の1回目。後編を読む)

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アメリカへ行こうと思った理由

──LAの治安について教えてください。

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YURI 新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、失業者が増え、犯罪率が上がった印象です。カリフォルニア州は大麻が合法なので、カリフォルニアで大量に大麻を購入して、州外に密輸をしようとする犯罪者が何十倍にも増えました。週に1件くらいだったのが、一日に10件近くに増えたイメージですね。職を失い、麻薬の密売に手を出す人も増えたように思います。

 LAでは警察官にもコロナ感染が広がったので、人手不足は今も深刻です。多くの人が自宅にこもっていた自粛期間中は、車上荒らしや車両盗難も増えました。長引くコロナによる経済面の影響やストレスのせいで、殺人やシューティングが増加しているのかなと個人的には思います。

「学歴社会の日本で、バツイチ子持ち、高卒の私が働ける場所なんてないだろうな」考えたというYURIさん。 (写真:YURIさん提供)

──銃社会のアメリカでは日本より凶悪犯罪が多い印象があります。そもそもYURIさんはなぜアメリカに行こうと思われたのですか?

YURI 受験勉強をしたくなかったからです(笑)。当時の私には大学生ってサークルや飲み会などを多くしているイメージがあって、そのような生活に魅力を感じなかったんですよね。

7年の結婚生活を経て離婚、シングルマザーに

 親にも「高校を卒業したら働く」と宣言していたのですが、父が「アメリカに行って英語でも勉強したら」と言ってくれたんです。勉強は嫌いでしたが、好きなダンスと英語を学べるのであれば、アメリカへ語学留学も良いなと思いました。父から日本人駐在員が多く住んでいるオレンジカウンティのアーバインが安全だと聞いて、アーバインの語学学校に決めました。

 語学学校を経て大学に進み、プロを目指してオーディションを受けている途中で妊娠がわかり、結婚。大学もやめて、専業主婦になりました。命を授かったことが何より嬉しかったので、ダンサーの夢を諦めることはそれほど苦ではなかったですね。

──7年の結婚生活を経て離婚し、シングルマザーになったそうですが、日本への帰国は考えなかったのですか。

YURI 両親からは「帰ってくればいい」と言われました。でも、学生結婚をして以来ずっと専業主婦だった私には、社会人経験がありません。学歴社会の日本で、バツイチ子持ち、しかも高卒の私が働ける場所なんてないだろうなと考えました。