日本のロック史上に燦然と輝く3ピースが生まれて消えるまでの17年間に何が起きていたのか? ジョニー吉長、ルイズルイス加部が天に召されたいま、残されたひとりが語る黄金の日々。これが最初で最後! 2時間にわたる独白をノーカットでお届けする。(文春ムック「竹中尚人責任編集 ロックとギターをめぐる冒険」より。前編はこちら)
割り切れない変拍子をどうナチュラルに聴かせるか?
JL&C(Johnny, Louis & Char)は特殊なバンドだったと思う。ボーカルをジョニーに任せて俺はギターに専念することもできたし、マーちゃんがベースではなくエレキ・ギターを弾く曲を作ってみたり、ベースとギターのダブルネック・モデルを使ってライブ中にマーちゃんと役割をスイッチしたり……自由な発想から表情豊かな音楽がたくさん生まれたんだ。ステージには3人しかいないのに、それ以上の音が聴こえてくるアンサンブルを目指したこともあって、演奏する時には音楽的な運動神経が大いに求められたりしたけど、ものすごくスリリングで楽しかった。
楽曲のアレンジは俺が担当していたんだけど、マーちゃんやジョニーは俺から出てくるアイディアを新鮮に感じてくれていたのかもしれない。素直にやりたいと感じる音楽表現に向かっていくから、厄介な変拍子なんかも生まれてきたりもするんだよ。例えば「宇治茶屋序幕」は、日本的な音階を取り入れた変拍子なんだけど、ものすごく細かい部分まで計算して作り込んでいて……「4とか8で割り切れない変拍子をどうナチュラルに聴かせるか?」ってことはガキの頃からずっと考えていたことなんだ。それをトリオという最小のバンド編成で表現してしまうところが、JL&Cならではの強みだよね。
ハードなロック・ナンバーからボサノバ的なアプローチの爽やかなポップス、プログレッシブ・ロックまで、すごく幅広い音楽性の曲を作って、それをどんどんふたりにぶつけていった。ジョニーとマーちゃんが演奏することを頭の中でイメージすると、いろんなアイディアがどんどん湧いてくるんだよ。思い返してみると「そんなことできるかよ」って反対されたことは一度もなかった。ふたりとも「音楽的な挑戦」という部分をおもしろがってくれていたように思う。特に最初の数年間は、3人の画家がでかいキャンパスに向かってひたすらいろんなモチーフを描きまくり、そこにみんなでいろんな色や描線を足していくというアトリエ的な表現だった気がするね。メンバーで喧嘩をしたこと? そんなことは一度もないね。バンドが新しい音楽を作っていこうとする限り、喧嘩をしたり辞めたりする理由なんてどこにもないんだよ。