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 当然ながら、そういった企画には当初から家族ドラマは入っていない。韓国の家族ドラマを世界にネット配信しても、共感を得られるのはアジアの一部、日本だけである。韓国の家庭観と国民性を実直に象徴する家族ドラマは、それゆえに世界同時配信には最も相応しくないドラマ内容ともいえる。

 最近の韓国ドラマが自然とアメリカ・ドラマ的になっているのは、また韓国ドラマ・テイストを意図的に消そうとしているのは、そうした傾向を実直に反映している証拠だ。

 そもそもネット配信を前提としたドラマ作品にとって、韓国を舞台にする必然性はほとんどない。韓国の俳優が出演し、韓国スタッフが製作することに違いはないが、配信対象・視聴対象が全世界であるならば、最初から全く違う視聴者を対象として作られているドラマ映像といえるだろう。

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韓国ドラマとアメリカ・ドラマの企画の差異

 韓国ドラマも大きく影響を受けた、世界のエンタメ・シーンを席巻していたアメリカ・ドラマにも2000年代以降、大きな変化がある。アメリカ・ドラマの傾向を分析することは、すなわち韓国ドラマの動向を探ることでもある(日本のドラマはせいぜい韓国とアメリカのドラマをリメイクするぐらいで、最初から論外だ)。

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 日本でもヒットした「フレンズ」(1994~2004年 シーズン10 NBC)、「アリーmy love」(1997~2002年 シーズン5 FOX)、「Sex and the City」(1998~2004年 シーズン6 HBO)、「デスパレートな妻たち」(2004~12年 シーズン8 ABC)等を経た後の、2010年代前後からの主なヒットドラマをここで少し説明しておきたい。長期シーズンとなった主なヒットシリーズとしては、次のような作品がある。

・限定された時間の中でのスパイと大統領のドラマ「24‐TWENTY FOUR‐」(2001~10年 シーズン8 FOX)

・犯罪心理を読み解き、事件を解決する分析官たちの活躍を描いた「クリミナル・マインド FBI行動分析課」(2005~20年 シーズン15 CBS)

・弁護士ドラマの新機軸を開拓した「グッド・ワイフ」(2009~16年 シーズン7 CBS)

・「グッド・ワイフ」のスピン・オフ「グッド・ファイト」(2017~20年 シーズン4 パラマウント+)

・壮大なスピンオフ・シリーズ「シカゴ・ファイア」(2012~21年 シーズン9 NBC)、「シカゴP.D.」(2013年~ シーズン8 NBC)、「シカゴ・メッド」(2015年~ シーズン6 NBC)

・政治の暗部を曝け出した究極の政界ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」(2013~18年 シーズン6 Netflix)

・指名手配犯罪者による世界の闇の勢力との闘い「ブラックリスト」(2013年~ シーズン9 NBC)

・世界犯罪組織との終わりのない戦い「ブラインド・スポット タトゥーの女」2015~20年 シーズン5 NBC

・緊急出動の人間ドラマ「9‐1‐1:LA救命最前線」(2018~20年 シーズン3 FOX

・冤罪で10年服役した弁護士による不可能性に挑む裁判ドラマ「プルーブン・イノセント 冤罪弁護士」(2019年 シーズン1 FOX)