1ページ目から読む
3/4ページ目

 それ以外の定番ヒットシリーズとして、

・CIAを馘になった元スパイの冤罪を晴らすまでの戦い「バーンノーティス 元スパイの逆襲」(2007~13年 シーズン7 USAネットワーク)

・パソコンオタクと女性エージェントとのスパイ・コメディ「CHUCK/チャック」(2007~12年 シーズン5 NBC)

・ミステリ作家と女性警察官とのロマンチック・コメディ「キャッスル ミステリ作家は事件がお好き」(2009~16年 シーズン8 ABC)

・復讐を貫徹するまでの果てしない一人の女性の戦い「リベンジ」(2011~15年 シーズン4 ABC)

・ロシアからの潜入スパイ夫婦のアメリカ国内の活動を描いた「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」(2013~18年 シーズン6 FX)

・無名の人々の毎日の日常を描いた、全く新しい発想の作品「THIS IS US」(2016~21年 シーズン5 NBC)

 そして、最新作として見逃せないのが、

・謎が謎を呼ぶSF設定による人間ドラマの頂点「マニフェスト 828便の謎」(2018~20年 シーズン1~2 NBC)

アメリカ・ドラマのリメイクを採択する戦略

 以上の2000年代の主なアメリカ・ドラマの作品傾向から韓国ドラマを見ると、韓国ドラマは敢えてアメリカ・ドラマとはあまり抵触しないようなテーマを選択しているように思える。

ADVERTISEMENT

 その理由は、韓国ドラマの製作方針として、アメリカの興味深いドラマについては、似たようなものを作るより、リメイクそのものを採択するからだと思う。こうした極めて合理的な考え方──製作体制において、韓国とアメリカのドラマ製作の意図は同一線上にある。逆に、韓国ドラマをアメリカでリメイクする発想はないようで、映画以外に、アメリカ側で韓国ドラマをリメイクした例はほとんどない。

 多様な人種で構成された移民大国ともいえるアメリカにおいて、アメリカ中心のテーマでドラマを製作するのは「フレンズ」「Sex and the City」辺りの時代で終わりを告げ、2010年代に入ると、定番の刑事ドラマ周辺(例えば「シカゴ」シリーズ)以外ではSF的な設定のドラマが増えているのにはそれなりの理由があるように思う。

 現実に材を取ると、移民・人種等の問題でヘイト・クライムの対象となりかねないし、さらにLGBT層を無視するわけにもいかない。性的マイノリティを主題にしたドラマはむしろ映画に相応しいテーマであり、逆にテレビドラマにおいては、アメリカ特有の人種構造を前提にした従来の企画(例えば、刑事ドラマであれば捜査チームに必ず黒人が一人配役されている等)のドラマが作り難くなっているのではないか。その反動として、「THIS IS US」のようなドラマが現れたのは決して偶然ではない。

 だが、SF設定であれば、現状の制約に縛られないためか、多様な人間模様を描く企画が増えた。最近の例でいえば、「マニフェスト 828便の謎」がその典型的な例である。